
研修プログラムの作り方|5ステップ設計と7つの成功ポイント【中堅・大企業人事向け完全ガイド】
はじめに
中堅・大企業の人事・人材開発担当者にとって、研修プログラムの設計は単なる教育イベントの企画ではありません。
従業員のキャリア形成がこれまでになく重視される時代において、研修プログラムやその集積である研修体系は優秀な人材を惹きつけ、定着させる「エンゲージメント向上施策」のひとつであり、企業戦略を支える「未来の競争力を生む投資」でもあります。
しかし現場の声はシビアです。
「例年通りの定例研修はあるけれど、成果が見えにくい」
「経営層には予算の妥当性を示す効果指標を求められるが、行動変容まで測れていない」
こうした課題を抱えたままでは、研修は“コスト”とみなされがちです。本記事では、大企業ならではの制約や特徴を踏まえながら、研修プログラム作成の全体像から設計・運営・効果測定までを戦略的視点で7つのポイントに整理します。
目次[非表示]
研修プログラムが企業戦略に直結する3つの理由
中堅・大企業における研修は、単なるスキル習得の場ではなく、企業の未来を形づくる戦略投資です。その理由は以下の3点に集約されます。
- 短期的効果:現場課題の解決に直結する
- 中長期的効果:企業文化の浸透や人材パイプライン構築につながる
- 説明責任:株主や社会に対し、人材投資の成果を可視化する責任がある
たとえばDXを推進する企業では、ITスキル研修にとどまらず、「変革を推進できる人材」を育成する必要があります。これはマインドセットの刷新や部門横断プロジェクトの推進力といった、単なる技術教育を超えた要素を含みます。
成功する研修に欠かせない3大要素
では、成功する研修に共通する要素は一体何でしょうか?成果を生む研修には、共通する「3つの要素」があると、弊社では考えます。
- 経営戦略との整合性:中期経営計画や重点戦略から逆算してテーマを設計
- 受講者ニーズの反映:現場の課題・スキルギャップを踏まえた設計
- 改善の仕組み化:効果測定と改善を定常サイクルに組み込む
経営層のニーズと現場のニーズが乖離しているという声もあります。しかし、戦略を実現する力が現場に備わらなければ戦略は絵に描いた餅です。逆に、現場の効率改善が戦略と連動していなければ、持続的な競争力にはつながりません。両者を統合して捉えることが、成功する研修企画の第一歩です。
ニーズ分析と“SMART”目標設定の5つの視点
経営戦略を踏まえて人材育成のテーマを据えたならば、いよいよ研修の設計フェーズに入ります。研修の設計では「ニーズ分析」と「目標設定」が重要です。
ニーズ分析は2方向から
- 定量的把握:アンケートや業績指標で全社傾向を把握
- 定性的把握:現場インタビューや同行調査で課題の背景を発見
弊社が過去に支援したある企業では、営業部門の数字低迷の背景を、同行訪問を通じて探ったところ、当初事務局が想定したマネジャーによるメンバーの指導・支援不足ではなく「初回商談前の情報収集と、顧客課題に対する仮説立案不足」というボトルネックが浮かび上がりました。
これにより、従来のリーダーシップ強化研修に、「事前準備・顧客理解・仮説立案」に関わる指導要素を追加し、受注率を向上させた事例があります。
戦略との連動
先に述べた通り、経営戦略と研修企画は一体でなければなりません。
例えば、海外展開を強化する企業では、語学や異文化理解研修に加え、海外拠点でのプロジェクトマネジメント研修をセット化。
DX推進を掲げる企業では、データ活用スキル研修と変革リーダー育成研修を並行実施。
このように「戦略テーマ→必要能力→研修設計」の連鎖を意識することが肝心です。
SMART目標設定の5視点
研修のテーマ、企画内容が決まれば、研修の目標やゴールを設定します。研修のゴールは抽象的でなく、“SMARTの法則”に基づくことが必須です。
- Specific(具体的)
- Measurable(測定可能)
- Achievable(達成可能)
- Relevant(業務と関連性がある)
- Time-bound(期限付き)
例:「3か月で成約率を10%改善」「半年で生産性を15%向上」
設計を成功に導く研修プログラム5ステップ
設計5ステップの流れ
具体的な研修プログラム設計の流れは次の5ステップです。
- 目的の明確化:経営層と合意形成
- 対象者の特定:階層・職種・経験に基づく要件整理
- コンテンツ構築:講義型・演習型・ケーススタディの最適組み合わせ
- 運営体制整備:担当者・講師・事務局の役割を定義
- 評価と改善:終了後の測定指標を設け、年1〜2回改善サイクルを回す
内製か外注かの判断
- 内製向き:自社文化や制度理解が必須なテーマ
- 外注向き:最新知見や短期変革を狙うテーマ
「何を学ぶか」が重要であることは言うまでもないのですが、「誰に学ぶか」は学習効果を左右する大きな要素です。
自社の実情を踏まえない「机上の空論」を学んでも時間の無駄である一方で、局面によっては、「井の中の蛙」から脱却することが必要で、外部からの刺激を取り入れることが効果的である場合があります。
弊社の経験では、「基礎の徹底やルーチンに磨きをかける場合は内製、先端知識を取り入れたり、短期に変革を起こす場合は外注」というハイブリッド型を採用する企業が多いようです。
コンテンツ開発と運営の4つの実践ポイント
研修の成果を左右するのは「設計」だけではありません。「運営と教材の質」も決定的です。
- 教材開発:図表やフロー図で理解を促し、事例を取り入れ「自分事化」を促進
- 講師選定:社内講師でリアル事例を、外部講師で最新トレンドを提供
- LMS活用:教材配布・進捗管理・復習を一元化
- 運営品質:会場準備、機材テスト、事前案内、フォローアップまでを徹底
教材づくりは“視覚+実務直結”
教材づくりは、受講者を飽きさせず、研修内容に引き付けるためにも重要です。研修資料は文字ばかりではなく、図表やフロー図で理解を促しましょう。
また、社内データや具体事例を盛り込むことで、受講者の「自分事化」が進みます。アカデミックな理論を現場に適用し、実践を促すような工夫を盛り込むことが重要です。
さらに、LMS(学習管理システム)を活用すれば、教材配布・進捗管理・復習が一元化できます。
講師選定の工夫
- 社内講師は現場に即したリアルな事例を共有できます。
- 外部講師は最新トレンドや他社事例を提供できます。
- 両者を組み合わせると、基礎知識から先端テーマまでカバー可能です。
- 最近では、知識インプットを映像視聴学習で行い、研修にはファシリテートに長けた講師を起用する企業も増えています。
運営の現場力
研修は設計だけでなく運営の質が成果を左右します。
会場や配信機材の事前テスト、受講者への明確な事前案内、役割分担の徹底、そして研修後のフォローアップまでが一連のプロセスです。
しかしながら、研修運営に携わる企業の人員、リソースが不足がちであるのも、現実です。LMS(学習管理システム)や外部ベンダー、オンライン/オフラインの使い分け、組み合わせを検討することで、リソース不足を補い、学習効果を最大化させることができます。
効果測定と改善を支える2つの仕組み
定量+定性で可視化
研修目的、目標やゴールと合致した、効果測定指標をあらかじめ設定しておくことが重要です。定量指標(テスト結果、KPI達成率)と定性指標(アンケート、上司評価)を組み合わせることで、研修効果を多角的に捉えられます。
ある大手メーカーでは、研修後3か月間の行動変容を360度評価で測定し、その結果を次期研修の設計に反映。改善スピードを飛躍的に高めました。
改善の仕組み化
研修を「やりっぱなし」にしないためには、改善を制度化する必要があります。
LMSデータを分析し、経営会議で結果を共有し、次期プログラムに即反映させる。このサイクルが根付くと、研修は企業の成長エンジンになります。
まとめ|戦略的人材育成を実現する4種類の学習形態
成果を出す研修には、以下の条件が欠かせません。
経営戦略と人材育成計画の緊密な連動
現場ニーズの反映と対象者設計の精緻化
効果測定と改善を組み込んだ運営設計
研修は単なる学習機会ではなく、戦略的な組織変革のツールです。
経営と現場をつなぐ“かけ橋”として、設計から運営、改善までを一気通貫で担えるのが、人事・人材開発担当者の真価だといえるでしょう。
サイコム・ブレインズでは研修設計に組み込み可能な要素として、以下4種類の学習形態を用意しています。顧客企業が抱える育成課題や学習の狙い、目的に応じて、最適な学習方法の使い分け、組み合わせをご提案いたします。
●社員が自身の興味関心、課題感に沿って自己啓発できる「動画ライブラリ」
●内定者から役員まで、各レイヤーの人材要件に基づく能力要件を身に付けるための独学教材「コースウエア」
●顧客企業の個別課題に応えるカスタマイズ研修(オンラインおよび対面集合研修)
●映像学習とオンラインワークショップ、学習プラットフォーム「ビジネスマスターズ」上での学習者同士の学び合いの3要素を組み合わせた「まなラン」