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変化する時代に考えるキャリアアップとは?担う役割から意味とスキルアップとの違いを整理

企業の事業再編やDXの推進などにより、社員に求められる役割やスキルは大きく変化しています。いまやキャリアアップは、昇進・昇格だけを指す言葉ではありません。職位や肩書き、給与が変わらなくても、担う責任や期待、職務の範囲が広がっているケースも少なくないようです。

こうした変化の中で、「これからどのようにキャリアの道筋を描いていけばよいのか」という問いは、個人にとっても企業にとっても現実的な課題となっています。

本記事では、キャリアアップの意味と捉え方について整理し、スキルアップやキャリアチェンジとの違いを確認したうえで、担う役割という観点からキャリアアップを解説します。あわせて、仕事の中でどのように職務・役割・責任範囲は広がり、組織はどのようにそれを支援し、育成設計へと結びつけていくことができるかを整理してお伝えします。

目次[非表示]

  1. 1.キャリアアップとは何か
  2. 2.人的資本経営とキャリアップの接点
  3. 3.キャリアアップとスキルアップ、キャリアチェンジとの違い
    1. 3.1.キャリアアップと「スキルアップ」の違い
    2. 3.2.キャリアアップと「キャリアチェンジ」の違い
  4. 4.キャリアアップは日々の仕事の中で始まっている
  5. 5.キャリアアップとスキルアップをつなぐ「仕事の中での成長設計」
  6. 6.まとめ

キャリアアップとは何か

事業の選択と集中やDXの推進、AI活用の拡大などにより、企業が社員に求める役割やスキルは絶えず変化しています。従来の業務の一部が自動化される一方で、より高度な判断や横断的な調整、新たな価値創出が求められるようになり、それに対応する新しい職種やポジションが新設されるケースも増えています。

こうした環境では、キャリアアップを単に昇進や管理職への登用といった「ポジションの上昇」と捉えるだけでは十分とはいえません。肩書きや年収といった外形的な変化にとどまらず、「どのような仕事を担い、どのような価値を創出できるようになるか」という職務上の影響力や成果責任の広がりまで含めて考える必要があります。

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以下の記事ではキャリア形成に通じる考え方を人材アセスメントの活用と絡めてご紹介しています。

人的資本経営とキャリアップの接点

経済産業省は、人的資本経営を「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」と定義しています。また、「持続的に企業価値を高めるためには、事業ポートフォリオの変化を見据えた人材ポートフォリオの構築や、イノベーションや付加価値を生み出す人材の確保・育成、組織の構築など、経営戦略と適合的な人材戦略が重要である」と示しています。*1

これは、企業にとって人材育成やキャリア形成支援が単なる人事・育成施策ではなく、経営戦略と直結するテーマであることを意味します。

一方、内閣府「国民生活に関する世論調査」(令和7年)*2や、ランドスタッド「ワークモニター2025」*3World Economic ForumNavigating work transformation in Japan*4では、収入や将来の安定への関心の高まりとともに、成長機会を重視する傾向が示されています。働く人々の関心は「今の仕事をどう続けるか」だけでなく、「どのように自分らしく成長し、将来に備えるか」へと広がっていると言えます。

このように、企業には戦略と連動した人材育成が必要であり、個人は成長の機会を求めている――この重なりの部分に「キャリアアップ」というテーマがあります。このキャリアアップを「仕事を通じて担う職務の質と範囲が変わり、より高い価値創出を担える状態へと移行していくプロセス」と捉えるならば、企業はその変化をどのように設計し、評価し、その変化を支援するのかを明確にする必要があります。個人には、自らの専門性を磨き、価値創出の水準を高めていく努力が求められます。

この両者が接続された時、キャリアアップは、個人の努力のみや、上司との相性、タイミングや偶然性などに左右されるものではなく、意図的に積み重ねていける成長のプロセスになります。そしてそれは、人的資本経営が目指す「人材の価値を最大限に引き出し、企業価値の向上につなげる」という考え方を、日々の職務の中で具体化していく実践でもあるのです。

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以下の記事では研修設計と効果測定について解説しています。

キャリアアップとスキルアップ、キャリアチェンジとの違い

キャリアアップとあわせて語られることの多い言葉に、「スキルアップ」や「キャリアチェンジ」があります。これらは似ているようで、実際には示している変化の方向や性質が異なります。それぞれの違いを整理しておくことで、目指している変化が明確になります。

たとえば、スキルの向上を促したいのか、役割の拡張を実現したいのか、あるいはキャリアの方向性そのものを転換したいのかが明らかになります。

この違いが社内で共有されていれば、研修や評価制度の設計も一貫性を持ちやすくなり、キャリア形成をより具体的に描くことができます。人材育成を戦略と接続させるためにも、まずそれぞれの違いを明確にしておくことが重要です。

キャリアアップと「スキルアップ」の違い

スキルアップとは、仕事を遂行するための知識や能力、行動の質を高めていくことを指します。 一方、キャリアアップは、担う役割や責任、期待される成果水準が変化・拡大していくことです。スキルの向上によって支えられる場合が多いものの、戦略変更や配置転換によって役割が先に広がるケースもあります。

両者の関係は、「スキルが役割を支える基盤になる」と捉えると理解しやすくなります。役割や肩書きが先行しても、それを支える知識・スキル・経験値が伴っていなければ、成果や信頼を持続することは難しくなります。

人材育成の観点では、

  • どのスキルを伸ばすことが次の役割につながるのか
  • その役割を担うためにどのような経験や学習機会が必要か

を整理し、スキルアップとキャリアアップを連動させて設計することが欠かせません。

ここで重要なのは、スキル形成と役割設計が意図的につながっているかどうかです。

スキルアップをキャリアアップにつなげる条件


スキルアップというと、資格取得や研修受講を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、実務上意味を持つのは、学んだ内容によって仕事の進め方や成果の質が変わることです。

しかし現実には、スキルアップが必ずしもキャリアアップにつながっていないと感じる企業もあります。その背景には、

  • 学びを活かせる役割やプロジェクトが用意されていない

  • 挑戦機会が限定されている

  • 評価制度がスキルの変化を十分に捉えきれていない

といった構造的な要因が考えられます。

学習と業務、役割設計がつながっていなければ、知識は増えてもキャリアは広がりにくくなります。その状態では、研修を実施しても育成投資が戦略成果に結びつきにくい構造が生まれてしまいます。

▶図表1:「キャリアアップ」と「スキルアップ」の違い

観点

キャリアアップ

スキルアップ

意味

職位・職務・役割・責任範囲が広がること

役割を果たすための能力が高まること

主な変化

任される仕事・責任の範囲など

思考・行動の質、専門性、仕事の進め方など

評価軸

昇進・昇格・重要な役割や案件のアサインなど

成果の安定性・応用力・再現性など

可視性

組織上は見えやすい場合が多い

外からは見えにくいが蓄積される

環境依存性

組織構造や評価制度の影響を受けやすい

環境が変わっても活かしやすい

関係性

スキルアップの結果として生じやすい

キャリアアップを支える基盤

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キャリアアップと「キャリアチェンジ」の違い

「キャリアアップ」と「キャリアチェンジ」は、どちらも将来を見据えた選択ですが、意味する変化の方向が異なります。

キャリアチェンジは、職種や業界、働き方など、キャリアの方向そのものを変えることを指します。営業職から人事職へ転向する、メーカーからIT業界へ移るといった例がこれにあたります。

一方、キャリアアップは、現在の仕事の延長線上で役割や責任が広がり、成果水準や評価が高まっていくことを指します。昇進や専門性の深化などが該当します。

両者を明確に区別することで、「今の延長線上で伸びる道」と「方向転換という選択肢」の違いが見えやすくなります。結果として、本人が納得感を持ってキャリアを選択しやすくなります。

.

▶図表2:「キャリアアップ」と「キャリアチェンジ」の違い

観点

キャリアアップ

キャリアチェンジ

意味

現在の延長線上で役割・責任が広がること

職種・業界・働き方などキャリアの方向性を変えること

主な変化

昇進・職務範囲の拡大・専門性の深化

職種転換、業界変更、働き方の切り替え

目的

成長・評価の向上、市場価値を高める

自分に合う領域を見つけ直す、環境を変える

必要な要素

現職での成果と信頼、知識・スキル・経験

新しい領域への学び直し・適応力

リスク

比較的小さい(延長線上の変化)

比較的大きい(未経験領域への移行)

組織からの支援

昇進制度、育成体系の構築、次期リーダーとしての育成

配置転換、リスキリング、キャリア面談

キャリアアップは日々の仕事の中で始まっている

キャリアアップは必ずしも昇進や昇格と同時に起こるわけではありません。実際には、肩書きが変わる前から、仕事の中で担う役割や責任範囲が広がっているものです。

例えば、

  • 担当業務の難易度が上がる
  • 部門連係など調整範囲や関係者が増える
  • 相談を受ける立場になる
  • プロジェクトの一部を任される
  • 意思決定を補佐する役割を担う

こうした変化は肩書きが変わらなくても「期待される役割」が高まっている状態を示しています。

重要なのは、いまの仕事をどの水準で引き受けているかです。

作業として処理しているのか、それとも成果責任を意識し、組織の目標や戦略との結びつきまで考えているのか。この違いが、次に任される役割を左右します。

つまり、キャリアアップとは、日々の仕事の中で発揮された能力・姿勢・成果などが、次の役割への期待へとつながっていくプロセスなのです。

そして、このプロセスが言語化され、共有されている組織では、成長の方向性が明確になります。現在の職務レベルと次に求められる役割が整理されていれば、本人と上司は同じ視点で成長を語ることができます。

その結果、「いま何を伸ばせばよいのか」「どの役割を目指しているのか」が見えやすくなり、日々の業務そのものが意味のある成長機会へと変わっていきます。

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キャリアアップとスキルアップをつなぐ「仕事の中での成長設計」

ここまで見てきたように、キャリアアップは日々の仕事の中で少しずつ進んでいきます。そして、そのプロセスを偶然に任せるのではなく、意図的に設計できれば、成長は、個人任せではなく、組織の中で支えられるものなります。

そのために必要なのは、大掛かりな制度改革だけではありません。まずは、「職務の段階」と「求められるスキル」の関係を整理することから始められます。

例えば、

  • 現在の職務で求められている責任の水準は何か
  • その責任を果たすために必要なスキルは何か
  • 次の職務段階では、どのような価値創出が求められるのか

こうした関係性が明確であれば、日々の業務は単なる作業ではなく、次の段階へ進むための実践機会になります。

研修や学習施策は、このつながりを補強するために存在します。学びそのものがキャリアアップを生むのではなく、職務の設計と結びついているときに初めて意味を持つのです。

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まとめ

本記事では、キャリアアップとは何かを整理し、スキルアップやキャリアチェンジとの違いを確認したうえで、仕事の中でキャリアはどのように広がるのか、成長支援の視点を持ちながら考えてきました。

キャリアアップとは、仕事を通じて担う役割と価値創出の水準を高めていくプロセスです。スキルアップは、そのプロセスを支える実務的な力といえます。両者を切り離して考えるのではなく、職務設計とスキル形成を結びつけて捉え、考えていくことが、変化の時代においてキャリア形成を進める際の土台となります。

個人にとっては、「いまの仕事をどの水準で引き受けているのか」を問い直すことが、次の成長への第一歩になります。企業にとっては、職務と役割の設計と育成施策がどのようにつながっているのかを整理することが、持続的な人材活用、人的資本経営の出発点になります。「現在の仕事はどの成長段階に位置づいているのか」「次の役割に向けて、どの力を伸ばす必要があるのか」この問いを共有できる組織では、日々の業務そのものが成長機会へと変わります。

キャリアアップとは、偶然ではなく、仕事の中で育まれていくものです。その構造を理解することが、個人と組織の双方にとって、これからの時代を前向きに歩む力になります。

参照

*1 内閣府「国民生活に関する世論調査」(令和7年8月調査)

https://survey.gov-online.go.jp/living/202509/r07/r07-life/

*2ランドスタッド株式会社「ワークモニター2025(20252月公開)

https://www.randstad.co.jp/about/newsrelease/20250212workmonitor.html

*3 経済産業省 「人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~」

https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/index.html

*4 World Economic Forum:「Navigating work transformation in Japan

https://www.weforum.org/stories/2025/12/navigating-work-transformation-in-japan/

■本記事の監修者■

ビジネスマスターズ・マーケティングチーム
ビジネスマスターズ・マーケティングチーム
教授システム学修士であり、eラーニングシニアコンサルタントであるデジタルラーニング事業部門長 花木喜英率いるビジネスマスターズ・マーケティングチーム。企業研修登壇実績10年以上・年間100本以上をこなすサイコム・ブレインズ/プログラムディレクター 小西功二とメンバー3名で、企業とビジネスパーソン双方が利を得る教材開発をコンセプトに、学術理論を徹底研究し開発されたビジネスマスターズを、世に広めるべく尽力しています。

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