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ガバナンスとは?意味をわかりやすく解説|コンプライアンス・マネジメントとの違い

ここ数年、データの改ざんや流出、粉飾決算、贈収賄などの不祥事の報道が続く中、企業の「ガバナンス(統治)」のあり方が強く問われています。

とはいえ、ガバナンスは単に不正を防ぐための仕組みではありません。金融庁が公表したコーポレートガバナンス・コード改訂案の序文でも、意思決定の透明性・公正性を担保しつつ迅速・果断な意思決定を促すことで、「守りのガバナンス」にとどまらない「攻めのガバナンス」の実現を目指すことが示されています。*1

本記事では、「ガバナンスとは何か」「なぜガバナンスが重要なのか」「企業のガバナンスを機能させるのは誰なのか」、意味をわかりやすく整理し、企業の持続的な成長と企業価値向上につながる、ガバナンスの基本的な考え方を解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.ガバナンスとは?意味をわかりやすく解説
    1. 1.1.ガバナンスを機能させる役割を担うのは誰か
  2. 2.なぜ今、企業にガバナンスが重要なのか
  3. 3.コーポレートガバナンス・コードとは?
    1. 3.1.「プリンシプルベース・アプローチ」と「コンプライ・オア・エクスプレイン」の原則
    2. 3.2.ルール・規程・制度との関係
  4. 4.コンプライアンスとガバナンスの違い
  5. 5.マネジメントとガバナンスの違い
    1. 5.1.マネジメントとは
  6. 6.ガバナンスが機能していない企業に起きるリスク
  7. 7.まとめ|ガバナンスを形骸化させないために
  8. 8.FAQ

ガバナンスとは?意味をわかりやすく解説

ガバナンスとは、企業経営の文脈では、組織や企業が適切に運営・統治されるための考え方と仕組みを指します。日本語では「統治」や「統制」と訳されることが多く、企業では「コーポレートガバナンス(企業統治)」として用いられるのが一般的です。

ガバナンス(Governance)は、もともと「舵を取る」「導く」といった意味を持つ言葉に由来し、国家や組織、企業などの集団が、どのような枠組みや考え方のもとで運営されているかを示す概念として用いられてきました。

ガバナンスという言葉から、「厳しい管理」「自由を制限するルール」をイメージする方もいるかもしれません。しかし、コーポレートガバナンス・コード等で示されている考え方では、ガバナンスは企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するための仕組みとして位置づけられています。

ガバナンスを機能させる役割を担うのは誰か

ガバナンスの仕組みを実際に機能させる中心的な役割を担うのは取締役会です。両者の関係性を簡単に整理すると、次のようになります。

  • ガバナンス:企業を適切に統治するための考え方や枠組み
  • 取締役会:ガバナンスを機能させるための意思決定・監督を行う機関

取締役会は企業の重要な意思決定を行うとともに、経営陣の業務執行を監督します。特に近年は、単なる意思決定の承認機関ではなく、企業価値の持続的向上に向けて経営を監督する「実効性ある監督機関」としての役割がより重視されています。

そのため取締役会が実効性ある監督機関として機能するためには、次のような姿勢や思考様式が重要になります。

  •  言うべきことを率直に指摘する姿勢
  • 株主をはじめとするステークホルダーの視点
  • クリティカル・シンキング(批判的思考)
  • リスクに対する感度

このように、企業の持続的な成長を支えるガバナンスは、取締役会を中心とした意思決定と監督の仕組みを通じて実際に機能していきます。

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「役員の資質をどう見極め、どのように育てるか」については以下の記事を参照ください。

なぜ今、企業にガバナンスが重要なのか

ステークホルダーの多様化で「説明責任」が問われるようになった

企業は、株主、従業員、取引先、顧客、地域社会など、多様なステークホルダーとの関係の中で事業を行っています。企業の意思決定や行動が社会に与える影響は大きく、経営の透明性や説明責任に対する期待も高まっています。

そのため、企業がどのような基準に基づいて経営判断を行っているのかを社内外に説明できる状態を整えることは、信頼を維持するうえで欠かせません。その前提となる枠組みとなるのがガバナンスです。

不祥事・不正は「個人」ではなく「構造」の問題として起きやすい

企業不祥事や不正行為が発生した際、原因が特定の個人の行為として扱われることも少なくありません。しかし多くの場合、その背景には、判断基準の不明確さ、チェックや監督の形骸化、異論や問題提起が出にくい組織構造など、組織の構造に起因する課題が存在します。

このような状態では、小さな違和感やリスクの兆候が共有されないまま放置され、問題が大きくなってから表面化しがちです。個人の倫理観や注意力だけで防ぐことには限界があるため、組織として判断と監督が機能する仕組み、すなわちガバナンスが必要になります。

ESG・資本市場の要請

ESGとは「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の3つの観点を考慮した企業経営の考え方を指します。特に、ESG投資の議論が広がる中で、企業のガバナンスのあり方は、企業価値を評価する重要な要素として位置づけられるようになっています。

機関投資家は、企業の経営の透明性や意思決定プロセス、取締役会の監督機能などを重視し、ガバナンスの質を企業評価の重要な指標として見ています。そのため、企業には自社の経営判断や戦略について説明責任を果たし、株主や投資家と建設的な対話を行うことが求められるようになりました。

こうした背景から、日本でもコーポレートガバナンス・コードや日本版スチュワードシップ・コードが整備され、企業と投資家の対話を通じてガバナンスの実効性を高めていく仕組みが進められています。*2

ガバナンスは、単に不正を防ぐための仕組みではなく、企業が持続的に成長し、中長期的な企業価値を高めていくための基盤として、資本市場からも強く求められているのです。

コーポレートガバナンス・コードとは?

コーポレートガバナンス・コードとは、上場企業が透明・公平かつ迅速に経営判断を行い、企業価値の向上を図るための指針です。金融庁と東京証券取引所が中心となって策定され、上場企業に対する企業統治の基本的な考え方を示しています。


このコードは2015年に導入され、その後2018年、2021年と改訂が行われ、企業統治の実効性を高めるための議論が継続的に進められてきました。近年は、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するために、取締役会の監督機能の強化や、企業と投資家の建設的な対話の重要性がより強く意識されるようになっています。 *3


こうした流れを踏まえ、現在はコーポレートガバナンス・コードのさらなる改訂に向けた検討が進められています。*4 改訂案の序文では、会社は株主から経営を付託された者としての責任(受託者責任)をはじめ、様々なステークホルダーに対する責務を認識し、説明責任を果たしながら迅速・果断な意思決定を促すことが重要であるとされています。また、ガバナンスは経営の制約ではなく、リスクテイクを伴う事業活動や企業の持続的成長を後押しする仕組みとして位置づけられています。

「プリンシプルベース・アプローチ」と「コンプライ・オア・エクスプレイン」の原則


コーポレートガバナンス・コードの特徴の一つが、「プリンシプルベース・アプローチ(原則主義)」を採用している点です。詳細な手順を規定するルールベースではなく、原則(プリンシプル)の趣旨・精神に照らして各社が自社の状況に応じて判断することが求められます。
その運用方法として採用されているのが「コンプライ・オア・エクスプレイン」です。各原則は法的拘束力を持つ規範ではないため、個別事情に照らして実施しないことが適切であれば、実施しない理由を十分に説明すること(エクスプレイン)が認められています。
また、エクスプレインを選択する場合には、表層的な説明に終始するのではなく、原則の趣旨・精神に照らして丁寧に説明することが求められます。

コンプライする場合でも、具体的な取組み内容や合理的理由を示すことが、企業と投資家の建設的な対話に資する取り組みとして望ましいとされています。

ルール・規程・制度との関係


ガバナンスという言葉から、社内規程や監査体制などの制度やルールを思い浮かべる方も多いかもしれません。確かに、制度やルールはガバナンスを支える重要な要素です。ただし、ガバナンスそのものは、それらの制度やルールの集合体を指す言葉ではありません。
ガバナンスとは、意思決定の前提となる考え方と、その判断を検証できる状態をつくるための枠組みです。もしガバナンスが整っていない場合、意思決定は場当たり的になり、組織としての一貫性を保つことが難しくなります。また、制度が整備されていても、運用が形式的にとどまれば、判断の質や説明責任は十分に担保できません。
重要なのは、制度やルールを増やすことではなく、適切な意思決定と監督を通じて企業が健全に成長していく状態をつくることです。その基盤となる考え方が、ガバナンスです。

コンプライアンスとガバナンスの違い


ガバナンスとコンプライアンスは混同されることが多い言葉ですが、意味は異なります。

コンプライアンスは、企業が法令や社会的規範を守って事業活動を行うことを指します。

一方でガバナンスは、企業の意思決定や監督の仕組み全体を指す概念です。

つまり、コンプライアンスは「ルールを守ること」に焦点を当てた概念であるのに対し、ガバナンスは「企業をどのような仕組みで統治し、意思決定を行うか」という枠組み全体を示していることからも、コンプライアンスはガバナンスを構成する重要な要素の一つと位置づけることができます。


企業が健全に成長していくためには、法令遵守(コンプライアンス)だけでなく、適切な意思決定と監督が行われる仕組みとしてのガバナンスを整えることが重要です。

  • コンプライアンス: 法令やルールに違反しない行動を徹底し、不正やリスクを防止すること

  • ガバナンス: 企業全体の意思決定や監督の在り方を整え、組織が健全な方向に進むようコントロールすること

マネジメントとガバナンスの違い


マネジメント(management)とガバナンス(governance)はどちらも組織運営に関わる概念ですが、役割が大きく異なります。簡単に整理すると、ガバナンスは「組織の方向性・ルールを定めて監督すること」、マネジメントは「決められた方針のもとで実行・運営すること」です。

マネジメントとは

組織の目標を達成するために、人・資金・時間などの資源を管理し、業務を実行していく活動を指します。具体的には、目標達成のための計画の作成、人員配置や予算の管理、業務の進捗管理、チームへの指示や調整などが含まれます。例えば、部長が部門の売上目標を達成するために営業活動を管理することや、工場長が生産計画や品質管理を行うことなどが挙げられます。マネジメントは、こうした現場の実行を担う役割だと言えるでしょう。

【関連記事】
「マネジメントとは何か」については以下の記事で詳しく解説しています。

ガバナンスが機能していない企業に起きるリスク

ガバナンスが十分に機能していない場合、その影響は必ずしも不祥事や不正としてすぐに表面化するとは限りません。むしろ日常の経営や業務の中で、気づきにくい形で問題が蓄積していきます。ここでは、ガバナンスが弱い企業で起こりやすい代表的な問題をご紹介します。

経営判断のプロセスが不透明になる

誰が、どのような基準で意思決定を行ったのかが組織内で共有されにくくなり、重要な判断が属人的になりがちです。その結果、判断の妥当性を後から検証できず、社内外への説明責任も果たしにくくなります。

権限と責任の所在が曖昧になる

権限と責任の分担が明確でない場合、問題が発生した際に「誰が責任を負うのか」が曖昧になります。判断が繰り返され、同種のリスクが温存される要因になります。

不正の兆候やリスクが見過ごされやすくなる

異論や問題提起がしにくい組織では、チェックや監督が機能しません。小さな違和感が共有されないまま放置され、顕在化した段階で対応が後手に回り、選択肢が狭まる可能性があります。

意思決定のスピードと質が低下する

ガバナンス強化は意思決定を遅くするように見えることがありますが、実際には判断基準やプロセスが曖昧な組織ほど、「誰が決めるのか」「どこまで決めてよいのか」が分からず、先送りや迷走が起きやすくなります。結果として、スピードと質の両方が低下します。

組織としての学習や改善が進みにくくなる

意思決定や結果を振り返る仕組みが弱いと、成功・失敗の要因が整理されず、組織学習が進みません。長期的には経営の質そのものに影響します。

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まとめ|ガバナンスを形骸化させないために

ここまで見てきたように、ガバナンスとは、企業が適切に意思決定を行い、経営を監督するための仕組み(企業統治)を指します。

ガバナンスは、制度や仕組みを導入すれば自動的に機能するものではありません。どれほど制度を整備しても、日々の意思決定や議論の中で活用されなければ、実効性は失われてしまいます。

ガバナンスを機能させるためには、異なる意見や懸念を率直に出せる組織風土を育てることが重要です。異論が出にくい環境では、意思決定の妥当性を検証する機会が失われ、結果としてリスクや課題が見過ごされやすくなります。

また、意思決定の結果を振り返り、何がうまくいき、何が課題だったのかを検証し、改善につなげるプロセス(運用のPDCA)を組織として持つことも欠かせません。こうした改善の積み重ねが、ガバナンスの実効性を高めていきます。

ガバナンスは取締役会だけの話ではなく、日常の会議や判断の積み重ねの中にこそ、その企業の姿勢が表れます。「なぜこの判断をするのか」「誰が責任を持つのか」「どのように検証するのか」といった問いが自然に交わされる状態をつくることが、実効性あるガバナンスの第一歩だと言えるでしょう。

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FAQ

Q.コーポレートガバナンスとは何ですか?

A.コーポレートガバナンスとは、企業が適切に運営されるように意思決定や監督の仕組みを整える「企業統治」のことです。取締役会による経営監督や、透明性のある意思決定プロセスを通じて、企業価値の持続的な向上を目指す枠組みを指します。

Q.ガバナンスの目的は何ですか?

A.ガバナンスの目的は、企業の意思決定の透明性や公正性を確保し、企業価値の持続的な向上を実現することです。また、不正や不祥事の防止だけでなく、迅速で適切な意思決定を支え、企業が長期的に成長するための基盤を整える役割もあります。

Q.なぜ企業にガバナンスが必要なのですか?

A.企業規模の拡大や事業の複雑化により、企業の意思決定は株主や従業員、顧客など多くのステークホルダーに影響を与えるようになっています。そのため、意思決定の透明性や説明責任を確保し、企業価値を持続的に高めるための仕組みとしてガバナンスが重要視されています。

Q.ガバナンスを機能させる主体は誰ですか?

A.企業においてガバナンスを機能させる中心的な役割を担うのは取締役会です。取締役会は企業の重要な意思決定を行うとともに、経営陣の業務執行を監督します。取締役会が実効性ある監督機関として機能することが、ガバナンスの実効性を高めるうえで重要です。

Q.ガバナンスが機能していないとどうなりますか?

A.ガバナンスが機能していない企業では、意思決定の基準や責任の所在が不明確になり、判断が属人的になりやすくなります。その結果、不正やリスクの兆候が見過ごされたり、経営判断の透明性が低下したりする可能性があります。長期的には企業の信頼や企業価値の低下につながるおそれがあります。

Q.ガバナンスとコンプライアンスの違いは何ですか?

A.コンプライアンスは法令や社内規程などのルールを守ることを指します。一方、ガバナンスは企業の意思決定や監督の仕組み全体を示す概念です。コンプライアンスは、ガバナンスを構成する重要な要素の一つと位置づけられます。

Q.ガバナンスとマネジメントの違いは何ですか?

ガバナンスは組織の方向性やルールを定め、経営を監督する役割を担います。一方、マネジメントはその方針のもとで人・資金・時間などの資源を管理し、業務を実行する役割です。つまり、簡単に言うと、ガバナンスが「統治」、マネジメントが「運営」に当たります。

参照

*1 第2回コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議(令和7年度)コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために~(改訂案) 
https://www.fsa.go.jp/singi/revision_corporategovernance/siryo/20260226/03-2.pdf

*2 金融庁「責任ある機関投資家」の諸原則 ≪日本版スチュワードシップ・コード≫ ~投資と対話を通じて企業の持続的成長を促すために~(2025年6月26日)
https://www.fsa.go.jp/news/r6/singi/20250626/01.pdf

*3 日本取引所グループ 「コーポレート・ガバナンス」
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/

*4 金融庁 「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」
https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/index.html

■本記事の監修者■

ビジネスマスターズ・マーケティングチーム
ビジネスマスターズ・マーケティングチーム
教授システム学修士であり、eラーニングシニアコンサルタントであるデジタルラーニング事業部門長 花木喜英率いるビジネスマスターズ・マーケティングチーム。企業研修登壇実績10年以上・年間100本以上をこなすサイコム・ブレインズ/プログラムディレクター 小西功二とメンバー3名で、企業とビジネスパーソン双方が利を得る教材開発をコンセプトに、学術理論を徹底研究し開発されたビジネスマスターズを、世に広めるべく尽力しています。

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