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取締役会の実効性評価とは|目的・評価項目・改善ポイントの基本をわかりやすく解説

企業のコーポレートガバナンスを強化するうえで、取締役会がどのように機能しているかは重要な要素となります。取締役会は、企業の重要な経営方針や戦略について議論するとともに、経営陣の業務執行を監督する役割を担う機関です。

しかし、取締役会を形式的に開催するだけでは、その役割が十分に果たされているとはいえません。近年では、取締役会がどの程度機能しているのかを客観的に分析・評価する「取締役会の実効性評価」に取り組む企業が増えています。

本記事では、取締役会の実効性とは何か、実効性評価が求められる背景、評価の主な観点、そして企業が取り組む改善のポイントを解説します。

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コーポレートガバナンスの基本的な考え方については、以下の記事で解説しています。

目次[非表示]

  1. 1.取締役会の実効性とは
  2. 2.取締役会の実効性評価の目的
  3. 3.取締役会の実効性評価の主な観点
    1. 3.1.取締役会の構成
    2. 3.2.議論の質・審議項目と内容
    3. 3.3.取締役会の運営プロセス
    4. 3.4.【取締役会の実効性評価レポートの例】
  4. 4.取締役会の実効性を高めるための主な取り組み
    1. 4.1.取締役会の構成の見直し
    2. 4.2.取締役会の議論のあり方の見直し
    3. 4.3.取締役会の情報提供体制の整備
    4. 4.4.外部評価の活用
  5. 5.取締役会の機能を高めるために企業が取り組むべきこと
  6. 6.まとめ
  7. 7.FAQ
  8. 8.関連記事

取締役会の実効性とは

取締役会は、企業の重要な意思決定を行うとともに、経営陣を監督する役割を担う機関です。コーポレートガバナンスの議論においては、取締役会がその役割を実質的に果たしているかどうかが重要な論点となります。

ここでいう「取締役会の実効性」とは、取締役会が形式的に開催されているだけでなく、企業価値の向上に向けた意思決定や経営監督が適切に機能している状態を指します。例えば、

  • 経営戦略や重要なリスクについて十分な議論が行われているか
  • 社外取締役が独立した立場から意見を述べられる環境が整っているか

などが、その判断のポイントになります。

取締役会が実効的に機能していない場合、議論が報告中心に終始し、戦略的な意思決定や経営の監督が十分に行われない可能性があります。その結果、経営判断の質が低下したり、リスクへの対応が遅れたりする恐れもあります。

こうした問題意識を背景に、近年では、取締役会がどの程度機能しているのかを客観的に分析・評価する「取締役会の実効性評価」が重要な取り組みとして位置づけられるようになっています。

取締役会の実効性評価の目的

日本では2015年にコーポレートガバナンス・コードが導入され、上場企業には取締役会の機能強化が求められるようになりました。コードでは、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示することが求められています。*1

実効性評価の目的は、単に制度を整えることではありません。取締役会の運営状況を客観的に見直し、課題を明確にすることで、議論の質や監督機能の向上につなげることにあります。

また、投資家の視点からも、取締役会がどのように機能しているかは企業の信頼性を判断する重要な要素とされています。実効性評価を通じて取締役会の改善に取り組むことは、企業価値の向上や持続的な成長にもつながると考えられています。

取締役会の実効性評価の主な観点

取締役会の実効性評価では、取締役会の構成や議論の内容、情報提供の状況など、さまざまな観点から運営状況を確認します。評価の方法は企業によって異なりますが、一般的には次のような観点が重要とされています。

取締役会の構成

取締役会の構成が企業の戦略や事業特性に適しているかは、実効性を評価するうえで重要な観点の一つです。企業は、取締役の専門性や経験のバランス、社外取締役の人数や独立性などを踏まえ、取締役会の構成が適切かどうかを検討する必要があります。

事業環境が変化する中で、企業に求められる経営判断も複雑化しています。そのため、取締役会には多様な専門性や経験を持つメンバーを配置し、さまざまな視点から経営課題を議論できる体制を整えることが重要とされています。

議論の質・審議項目と内容

取締役会の議論が、報告事項の確認にとどまらず、経営戦略や重要なリスクなどのテーマについて十分に行われているかも重要な評価ポイントです。取締役会では、中長期的な経営戦略や企業価値の向上に関わる重要事項について、取締役が多角的な視点から議論することが求められます。

また、取締役が自由に意見を述べることができる環境が整っているかどうかも、議論の質を左右する要素となります。

取締役会の運営プロセス

取締役会の開催頻度や議題設定、議論の進め方などの運営面も重要な評価項目です。企業は、議題が適切に整理されているか、経営の重要テーマに十分な時間が確保されているかなどを確認しながら、取締役会の運営を見直す必要があります。

特に、取締役会で質の高い議論を行うためには、取締役が必要な情報を十分に理解していることが前提となります。企業の事業内容や経営環境について十分な情報を把握できるよう、適切な情報提供の仕組みを整えることも重要です。

取締役会の実効性評価レポートの例】

株式会社三井住友フィナンシャルグループ「コーポレートガバナンス」(随時更新)
https://www.smfg.co.jp/company/organization/governance/

三井物産株式会社「取締役会の実効性の評価」(2025年3月期開示)https://www.mitsui.com/jp/ja/company/outline/governance/status/pdf/j_eoe_202503.pdf

トヨタ自動車株式会社「コーポレートガバナンス」(2025年7月21日版)
https://global.toyota/pages/global_toyota/ir/library/corporate-governance/2025_corporate-governance_jp.pdf

鹿島建設株式会社 「コーポレート・ガバナンス報告書」(随時更新)
https://www.kajima.co.jp/prof/governance/pdf/governance.pdf

明治ホールディングス株式会社「経営体制 コーポレートガバナンス体制」(随時更新)
https://www.meiji.com/investor/governance/management/

取締役会の実効性を高めるための主な取り組み

取締役会の実効性評価は、評価を行うこと自体を目的とするものではありません。重要なのは、評価によって明らかになった課題をもとに、取締役会の運営や体制を継続的に改善していくことです。

企業は実効性評価の結果をもとに、取締役会の構成や議論の進め方、運営方法などを見直しながら、取締役会の監督機能の強化を図ります。

ここでは、取締役会の実効性を高めるために多くの企業が取り組んでいる主な施策を整理してご紹介します。

取締役会の構成の見直し

取締役会が企業の戦略や事業特性に適した構成になっているかを定期的に検討することは、実効性を高めるうえで重要です。企業の事業環境が変化する中で、取締役会に求められる専門性や経験も変わります。

そのため企業は、デジタル分野やグローバル経営、リスク管理などの知見を持つ人材を取締役会に加えるなど、取締役会の構成を見直しながら議論の質を高める取り組みを行います。

取締役会の議論のあり方の見直し

取締役会が本来の役割を果たすためには、議論の内容や時間配分を見直すことも重要です。取締役会では、日常的な業務報告に多くの時間を割くのではなく、経営戦略や中長期的な成長戦略、重要なリスクなど、企業価値に大きく影響するテーマについて議論することが求められます。

そのため企業は、議題の整理や会議体の役割分担を見直しながら、取締役会が戦略的な議論に集中できる運営体制を整えることが重要になります。

取締役会の情報提供体制の整備

取締役会で質の高い議論を行うためには、取締役が必要な情報を十分に理解していることが前提となります。そのため企業は、取締役会に提出される資料の内容や提供のタイミングを見直し、議論に必要な情報が適切に共有される仕組みを整備する必要があります。

また、社外取締役が企業の事業や経営環境を理解するための説明や情報提供を充実させることも、取締役会の議論の質を高めるうえで重要な取り組みといえます。

外部評価の活用

取締役会の実効性評価においては、外部の専門家を活用する企業もあります。第三者の視点を取り入れることで、内部では気づきにくい課題を明確にし、取締役会の運営改善につなげることができます。

外部評価は、取締役会の構成や議論の内容、情報提供の仕組みなどを総合的に分析し、改善の方向性を整理するうえでも有効な手法とされています。

このような取り組みを継続的に行うことで、取締役会の議論の質や監督機能を高め、企業全体の意思決定の質を向上させることにつながります。

取締役会の機能を高めるために企業が取り組むべきこと

取締役会の実効性を高めるためには、制度や仕組みを整えることだけでなく、取締役会を構成するメンバーが、それぞれの役割を十分に理解し、適切に機能できる環境を整えることも重要です。

役員教育の徹底

特に近年では、社外取締役に求められる役割も大きく変化しています。社外取締役は、単に形式的に取締役会に参加するのではなく、企業の戦略やリスクについて主体的に議論し、経営陣に対して建設的な意見を提示することが求められるようになっています。そのため、取締役会の各メンバーが、企業の事業やガバナンスの仕組みについて理解を深める機会を持つことも重要になります。

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率直な議論ができる組織風土の醸成

また、取締役会の議論の質を高めるためには、取締役同士が自由に意見を交わすことができる環境も欠かせません。異なる視点を持つ取締役が率直に議論を行うことで、多角的な視点から経営判断を検討することが可能になります。

企業を取り巻く経営環境が複雑化する中で、取締役会の役割はますます重要になっています。取締役会の実効性評価を継続的に行い、その結果を改善につなげていくことは、企業価値の向上と持続的な成長を支える重要な取り組みといえるでしょう。

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コーポレートガバナンス強化については、以下の記事で解説しています。

まとめ

取締役会は、企業の重要な経営判断と経営監督を担う中核的な機関です。しかし、取締役会を形式的に開催するだけでは、その役割を十分に果たしているとはいえません。

取締役会の実効性評価は、取締役会がどの程度機能しているのかを客観的に分析し、その結果を改善につなげるための重要な取り組みです。取締役会の構成や議論の内容、情報提供の仕組みなどを定期的に見直すことで、取締役会の監督機能をより効果的に発揮することができます。

企業を取り巻く経営環境が複雑化する中で、取締役会の役割はますます重要になっています。実効性評価を通じて取締役会の運営を継続的に改善していくことは、企業価値の向上と持続的な成長を支える重要な基盤といえるでしょう。

FAQ

Q1 取締役会の実効性評価とは何ですか?

A. 取締役会の実効性評価とは、取締役会が企業の重要な意思決定や経営監督の役割を適切に果たしているかを分析・評価する取り組みです。

取締役会の構成、議論の質、情報提供の状況、会議運営などの観点から運営状況を確認し、課題を明らかにして改善につなげることを目的としています。

Q2 取締役会の実効性評価は義務ですか?

A. 法律で直接義務付けられているわけではありませんが、日本のコーポレートガバナンス・コードでは、上場企業に対して取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示することが求められています。

Q3 取締役会の実効性評価ではどのような点を評価しますか?

A. 企業によって評価方法は異なりますが、一般的には次のような観点から評価が行われます。

  • 取締役会の構成(専門性や社外取締役の独立性など)
  • 取締役会の議論の質
  • 取締役会への情報提供の適切性
  • 会議運営や議題設定などの運営プロセス

これらを総合的に確認することで、取締役会の監督機能が適切に発揮されているかを検証します。

Q4 取締役と執行役員の違いは何ですか?

A. 取締役は会社法に基づく役職であり、取締役会を構成して企業の経営方針や重要事項について議論するとともに、経営陣の業務執行を監督する役割を担います。

一方、執行役員は会社法で定められた役職ではなく、企業が任意に設置する役職で、事業運営や業務の執行を担います。

Q5 取締役会の役割とは何ですか?

A. 取締役会の主な役割は、企業の重要な経営方針や戦略について議論するとともに、経営陣の業務執行を監督することです。

取締役会が適切に機能することで、企業の意思決定の質を高め、企業価値の向上につながることが期待されます。

Q6 取締役会の実効性を高めるためには何が重要ですか?

A. 取締役会の実効性を高めるためには、制度を整えるだけでなく、取締役会の運営や議論の質を継続的に改善していくことが重要です。例えば、取締役会の構成を見直すことや、経営戦略など重要テーマに十分な議論の時間を確保すること、社外取締役が積極的に意見を述べられる環境を整えることなどが挙げられます。

また、定期的に実効性評価を実施し、その結果をもとに取締役会の運営を改善していくことも重要な取り組みとされています。

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参照

*1 日本取引所グループ 「コーポレート・ガバナンス」
https://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/

 大和総研 「取締役会実効性評価の近時動向~企業価値の向上を図る真の実効性評価の在り方とは」(2024年6月28日発行)
https://www.dir.co.jp/report/consulting/governance/20240628_024469.pdf

■本記事の監修者■

ビジネスマスターズ・マーケティングチーム
ビジネスマスターズ・マーケティングチーム
教授システム学修士であり、eラーニングシニアコンサルタントであるデジタルラーニング事業部門長 花木喜英率いるビジネスマスターズ・マーケティングチーム。企業研修登壇実績10年以上・年間100本以上をこなすサイコム・ブレインズ/プログラムディレクター 小西功二とメンバー3名で、企業とビジネスパーソン双方が利を得る教材開発をコンセプトに、学術理論を徹底研究し開発されたビジネスマスターズを、世に広めるべく尽力しています。

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