
管理職育成サービスの選び方――失敗しない5つの視点と育成事例
働き方改革、DX、人的資本開示、そしてVUCAやBANI環境の常態化により、管理職に求められる役割は急激に高度化しています。現場マネジメント、部下育成、戦略理解、意思決定、心理的安全性の担保など、従来の経験則だけでは対応できない課題が山積みです。
こうした背景から、集合研修だけに頼らず、継続的な支援を組み合わせた管理職育成サービスへの関心が高まりつつあります。本記事では、「管理職育成にどんな外部サービスがあるのか」「どのような観点で選ぶべきか」「実際に企業に導入されている育成の事例は何か」をわかりやすく解説していきます。
目次[非表示]
- 1.管理職育成サービスの主な種類と特徴
- 1.1.① 管理職研修サービス
- 1.2.② アセスメントサービス
- 1.3.③ 個別コーチングサービス
- 1.4.④ デジタル/eラーニングサービス
- 2.管理職育成サービスの選び方「失敗しない5つの視点」
- 2.1.① 自社組織の風土・統制・管理職像との相性で検討する
- 2.2.② カスタマイズの度合いで検討する
- 2.3.③ 現場実践との接続設計があるかどうかを確認する
- 2.4.④ 評価・昇格・勤務環境や上司との連動性を確認する
- 2.5.⑤ 伴走やフォロー体制の有無を確認する
- 3.最新テクノロジーを活用した育成サービス
- 4.管理職育成サービスの導入事例
- 5.まとめ
- 6.FAQ(7問)
- 7.引用・参照元とURL一覧
管理職育成サービスの主な種類と特徴
近年では、管理職育成サービスは、単発研修に加えて継続的な支援を組み合わせる設計が増えています。企業を取り巻く環境が厳しく、また変化も激しい中で、管理職に求められる役割は高度化・多様化しており、一つの手段だけでは育成が完結しなくなっています。
そのため現在は、複数の育成サービスを目的や段階に応じて組み合わせる設計が有効とされています。代表的なサービスは以下の通りです。
① 管理職研修サービス
従来型の集合研修に位置づけられますが、近年は知識インプット中心から、異業種やリアルな実務を扱ったケースによる討議、アクションラーニングやワークショップ型の研修へと進化しています。
マネジメントの原理原則、戦略理解、意思決定力、部下育成などのコンテンツを体系的に理解し、現場実践しながらレビューを反復するプログラムは有効です。
最新事例の一つをご紹介しましょう。
既存の管理職を集合研修形式で集めて管理職のマネジメントとリーダーシップの具体的能力要件を討議してもらいます。
次の段階では、整理される前のそのアウトプットをサイコム・ブレインズで分析・編集し、360度サーベイプログラムとして完成させます。
そのプログラムに基づくサーベイを新任管理職の研修前に実施し、サーベイ結果について本人に内省してもらいます。
その内省して得られた課題を持ち寄り、グループコーチングの研修を実施します。(この研修では、小編成のグループを作り、グループの中で自身の課題を発表し、他のメンバーからフィードバックをもらいます)
これはワークショップ型の施策の一例ですが、実施にあたって、次のような効果が得られました。
・今まで曖昧だった管理職に必要な能力要件を明確にすることができ、属人的な指導を回避する仕組みができた。
・サーベイ結果の自己分析による内省だけでなく、その後のグループコーチングによる内省によって気づきがより深まり、課題解決に対する意識および実践の度合いが高まった。
② アセスメントサービス
アセスメントサービスとは、先程ご紹介した360度サーベイ、またHogan Assessment や DiSC Managementなどの行動特性分析ツールを活用し、管理職としての資質、思考傾向、リスク要因を可視化するサービスです。これらのサービスはサイコム・ブレインズでも提供が可能です。これらアセスメントの強みは「客観データに基づく育成設計」が可能になる点にあります。
本人の自己認識と周囲評価のギャップを明確にし、自己理解や対話を深めるための補助的なツールとして活用されています。昇格判断、個別育成計画、コーチング設計の起点として活用されるケースが多く、育成の精度と納得感を高める基盤として重要な役割を担います。
※Hogan Assessmentは Hogan Assessment Systems社のアセスメントサービスです。
※DiSCは、広くビジネス現場で活用されている行動特性アセスメントの一つです。
③ 個別コーチングサービス
外部の専門コンサルタントやコーチが1on1で伴走し、行動変容に深く介入する育成手法です。テーマは、意思決定の質の向上、リーダーシップスタイルの確立、戦略や対人関係の課題整理など多岐にわたります。
特徴は、本人の内省を促しながら、実行と振り返りを繰り返す点です。集合研修では難しい「個人固有の課題」へのアプローチが可能で、個別の課題に向き合える点から、行動変容の定着を後押ししやすい手法とされています。次世代幹部や重要ポジション任用前の育成で導入される例が増えています。
④ デジタル/eラーニングサービス
時間制約が厳しい管理職向けに、マイクロラーニングや生成AIを活用したデジタル学習は活用が広がりつつあります。短時間で必要な知識にアクセスできる利便性と、反復学習のしやすさが特長です。サイコム・ブレインズでは、「まなラン」サービスがありますが、このサービスは複数のラーニング・タッチポイント(学習接点)を組み合わせたものであり、日常業務の中に学習接点を組み込むことで学びの定着を支援しています。
最近では、生成AIを活用してケース課題へのフィードバックを即時提供したり、個々の課題に応じた学習レコメンドを行ったりするサービスも登場しています。ただし、単独利用では行動変容に結びつきにくいため、研修やコーチングの補完的手段として位置づけることに留意が必要です。
▶表1:育成サービスの使い分け
育成サービス | 主な役割 | 適したタイミング |
|---|---|---|
管理職研修 | 基礎力強化とナレッジシェア | 昇格直後、戦略の推進など |
アセスメント | 課題の可視化と内省 | 昇格前、育成施策の企画段階 |
コーチング | 行動変容、良い行動の定着 | 研修フォロー段階、昇格検討時 |
デジタル学習 | 知識の強化、継続学習 | 事前習得、研修後の知識の補完 |
このように、管理職育成サービスは「どれを選ぶか」よりも、「どの順番で、どう組み合わせるか」が成果を左右するといって良いでしょう。
管理職育成サービスの選び方「失敗しない5つの視点」
管理職育成サービス選定で失敗しないためには、「よく知られているから」「最近出たサービスだから」のような安易な判断をしてしまわないことです。重要なのは、自社の課題文脈にきちんと合っているかどうかです。以下の5つの視点で検証していくことで、失敗の確率を下げることができるでしょう。
① 自社組織の風土・統制・管理職像との相性で検討する
まず確認すべきは、自社の組織風土、組織統制、自社が求める管理職像が言語化されているかです。上意下達的な統制を行わなければならない職種や組織風土であれば、教育の仕組みとして規律性の強いサービスが求められるでしょう。フラットな組織で協働型の風土であれば、自由にコミュニケーションが展開できる教育サービスが向いているかもしれません。学習コンテンツだけでなく、教育施策のやり方まで確認する必要があります。
② カスタマイズの度合いで検討する
パッケージ的な一律の研修設計は、効果が平均化されがちになったり、実務に極端に合っていなかったりすることがあります。自社の管理職の業務や指導実態を整理した上で、検討する商品サービスは自社の実態に寄り添えるものかどうかを調べておくようにします。管理職のアセスメント結果などがあればそれも参考にできるでしょう。個々の課題が可視化されているため、育成内容をどのくらいカスタマイズすれば良いかの判断にもなり得ます。管理職層は新任と既存では経験差も顕著ですし、画一施策で良いかどうかはよく考えなければなりません。
③ 現場実践との接続設計があるかどうかを確認する
どれだけ質の高い研修でも、業務で試されなければ意味がありません。「研修後に何を、いつ、誰と実践するのか」まで設計されているサービスは、行動変容が定着しやすい傾向にあります。例えば、「現場課題を取り上げて連動させるプロジェクトが可能なのか」「KPI(行動指標)の義務付けやそのレビューの仕組みはあるのか」など、教育プログラムの仕組みについてもよく確認しましょう。
④ 評価・昇格・勤務環境や上司との連動性を確認する
育成サービスが、評価・昇格・勤務環境などと分断されていると、管理職のモチベーションに影響したり、教育の目的から外れてしまったりすることもあり得ますので、評価・昇格・勤務環境との連動感は重要です。また、役員や部長クラスの上司が内容を理解し、日常のマネジメントで活用できる設計になっているのか、上司を巻き込みながら組織として取り組めるものなのかなど、受講者の上司の巻き込み度合いも重要な判断基準となります。
⑤ 伴走やフォロー体制の有無を確認する
単発導入で終わるサービスは、効果が限定的になりがちです。定期的な振り返りができる仕組みになっているか、オプションとしてフォローシステムを導入することが可能なのか、実践データなどのフィードバックサービスがあるのか、個別コーチングのサービスはあるのかなど、継続支援の仕組みについても調べることが大切でしょう。フォローシステムの導入は、実践の成果に影響を与えるはずです。
最新テクノロジーを活用した育成サービス
近年急速に進化しているのが、DXや生成AIを活用した管理職育成サービスです。従来の「集合研修+OJT」だけではカバーしきれなかった 即時性、個別最適、継続性 をテクノロジーが補完する形で、育成の選択肢が大きく広がっています。
例えば、
AIが管理職の回答や行動ログを分析し、個別フィードバックを提示
チャットAIによるケース相談や意思決定シミュレーション
学習履歴や弱点データに基づくレコメンド教材提示
など、「学びたい瞬間に、必要な内容だけを」提供する環境が整いつつあります。特に管理職は業務過多で学習時間の確保が難しい層であるため、こうしたマイクロラーニング型、オンデマンド型の育成サービスとの相性は高いと言えるでしょう。
また、生成AI活用の大きな価値は、思考の壁打ち相手が常に存在する状態を作れることにあります。部下対応、評価面談、意思決定など、管理職が日々直面する「正解のない問い」に対し、AIが問い返しや選択肢提示を行うことで、内省の質を高めることが期待できます。これは従来のeラーニングにはなかった機能です。
一方で注意点もあります。テクノロジーはあくまで手段であり、それ単体で人を育てることはできません。AIによるフィードバックが現場上司の支援と断絶していたり、評価制度と連動していなかったりすると、「便利だが使われなくなるツール」になりがちですので注意は必要です。
重要なのは、「対話(上司・コーチ・仲間)」「内省(自分の意思決定を振り返る機会)」「実践(現場で使う前提設計)」といった人間的な学習プロセスと、テクノロジーをどう組み合わせるかです。生成AIは、管理職の学習と判断を加速させる補助輪として位置づけるようにすると良いでしょう。
管理職育成サービスの導入事例
管理職を育成するためのサイコム・ブレインズの研修サービス導入事例を3つご紹介します。顧客企業では、いずれも研修単体での導入は効果がないと判断し、複合的な施策を導入しています。それぞれのポイントとなる点を中心に見ていきましょう。いずれも実在企業の取り組みを参考に構成したモデルケースです。
事例①:大手総合メーカーA社の新任管理職研修プログラム
A社では、グループ会社の新任管理職を含めて1年間の教育プログラムを走らせています。上司を巻き込んだ事前課題への取り組み、eラーニングによる知識のインプット、集合研修の実施、実践に向けた行動計画立案と実践・レビューを反復する施策です。研修の最終回では、チームビジョン実現に向けたマネジメント実践の成果発表を行い、講師との個別コーチングと受講者同士のグループコーチングセッションを実施して、このプログラムが終了します。多くの教育手段を盛り込んだ連動型の施策です。コースが終了するタイミングの1年後には、管理職としての悩みの解消度合いも高まり、指導者としてのマインドとスキルの向上が実現できています。
▶図1:事例①の教育の手段・概要・狙い

事例②:大手金融B社の女性管理職育成プログラム
B社では、グループ会社の女性部長候補者を含めた約半年間の女性管理職育成プログラムを展開しています。まず、Hogan Assessmentを実施し、自身のマネジメント課題について内省してもらいます。その上で研修を4回にわたって実施します。1回目はリーダーシップの理解と強化がテーマです。このときにHogan Assessmentの結果を再度検証しながら受講者間で課題についてフィードバックし合うような仕組みになっています。2回目研修のテーマは意思決定力強化、3回目研修のテーマは交渉調整力とセルフブランディングの強化、4回目の研修は課題設定力の強化とグループワーク「当社ビジョン実現への取り組み課題」の発表です。研修の前後には事前課題と事後課題があり、実践型ワークショップの仕組みになっています。全研修終了後には、講師が受講者に対して個別コーチングを数日にわたって実施します。女性活躍推進を後押しするとともに、組織内の意識変化やコミュニケーション活性化につながったと評価されています。
※Hogan Assessmentは Hogan Assessment Systems社のアセスメントサービスです。
▶図2:事例②の教育の手段・概要・狙い

事例③:大手設備機器メーカーC社のリーダーシップ強化プログラム
C社では、グループ会社の管理職候補者を含めたリーダーシップ強化プログラムを走らせています。まず、事前課題で映像学習と事前課題に取り組んでもらい、知識の事前インプットと自己課題の内省をしてもらいます。その後、2日間の集合研修を実施します。研修内容は、リーダーシップスタイルの理解と今後の自己スタイルの設定、意思決定力強化のためのグループワークです。ユニークな点は、研修中に講師以外のアセッサーがグループに張り付き、受講者個人のスキルチェックを行う点です。論理性、コミュニケーション力、統率力などの高さを測ります。そのアセスメント結果は講師に共有され、後日、受講者の部長と担当講師との個別面談を何日かにわたって行います。その面談では、講師から受講者個人のアセスメント結果の報告を行い、今後その受講者に対してどのような指導をすべきかを部長とディスカッションする仕組みになっています。個別課題解決の手厚い施策であり、受講者の所属する部門長は、受講者に対する指導内容や育成の仕方が明確になり、受講者のさらなる成長に影響を与えています。
▶図3:事例③の教育の手段・概要・狙い

まとめ
近年の育成サービスは、研修・アセスメント・コーチング・デジタル学習・生成AI活用など、多様な手段を組み合わせた育成システムへと進化しています。
重要なのは、どのサービスを使うかではなく、「自社の管理職育成をどう設計するか」という視点です。「自社が求める管理職像は何か」「そのために、どの行動変容が必要か」「どのフェーズで、どの育成サービスを使うのが適切か」などを整理せずにサービスを選ぶと、「満足度は高いが、現場は変わらない」という典型的な失敗に陥りやすくなります。
目指すべきは、「管理職が育ち続ける仕組みをつくること」です。管理職育成サービスは、そのための「手段」として戦略的に選び、組み合わせていくことが人材開発には求められます。
FAQ(7問)
Q1:管理職育成は、まず研修から始めるべきでしょうか?
A:必ずしも研修が最初とは限りません。アセスメントなどを起点に課題を可視化し、その後に研修、コーチング、実践を組み合わせる方が効果的です。課題が見えないままの研修は形骸化しやすくなります。
Q2:外部サービスを使うと、自社ノウハウがたまらないのでは?
A:設計次第で、むしろ社内資産になります。事前課題や事後課題の実践データ、アンケート記載内容、個別アセスメントの結果、プラットフォーム内に格納されたグループセッションのアウトプット結果など、自社ノウハウの蓄積が可能です。導入時点で内製化や展開を見据えておくことが重要です。
Q3:管理職全員に同じ育成サービスを提供すべきですか?
A:一律提供はすべきであるとは言えません。管理職の経験、強み、課題は異なります。アセスメントや役割別設計を行い、共通基盤として一律で受けてもらうもの、個別で取り組んでもらうもの、といった線引きも必要でしょう。
Q4:生成AIを使った管理職育成は本当に効果がありますか?
A:単体ではなく、設計と組み合わせれば効果があります。AIは「フィードバック」「壁打ち」「情報整理」には非常に有効ですが、価値観の内省や人への影響力は、人との対話がより有効です。対面・1on1・AIの役割分担が成果の鍵です。
Q5:育成サービスの効果はどう測れば良いですか?
A:満足度だけではなく、行動指標や現場指標で測ると良いでしょう。例えば、「1on1実施率」「意思決定スピード」「部下エンゲージメント」「離職率や生産性」など、研修後に変わる「行動」と「成果」をKPIとして設定します。
Q6:管理職が忙しく、育成の時間が取れません。どうしたら良いですか?
A:「まとめて学ぶ」設計をやめることがポイントです。マイクロラーニング、AI相談、短時間1on1など、「業務の中で学ぶ」設計に切り替えることで、忙しい管理職ほど参加しやすくなります。
Q7:管理職育成サービスはどのタイミングで導入すべきですか?
A:課題が顕在化してからでは遅い場合があります。理想は、管理職候補・昇格前リーダー段階からの導入です。昇格前に視座を高めることで、昇格後の立ち上がりと成果が大きく変わります。
引用・参照元とURL一覧
1.経済産業省「人的資本経営に関する指針・資料」
https://www.meti.go.jp/
2.Hogan Assessments
https://www.hoganassessments.com/
3.DiSC Profile
https://www.discprofile.com/
4.サイコム・ブレインズ株式会社
https://www.cicombrains.com/
サイコム・ブレインズの研修プログラム
管理職(課長層)研修Pentagon Plus - グローバルに通用する研修・アセスメント・映像教材|MBK Wellness株式会社 サイコム・ブレインズ事業本部
Cicom LXD まなラン® (ラーニングエクスペリエンスデザイン )- グローバルに通用する研修・アセスメント・映像教材|MBK Wellness株式会社 サイコム・ブレインズ事業本部



