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目標達成に導く現場マネジメント手法――成果が出る仕組みと成功事例

目標管理制度を導入している企業は多いものの、「形骸化してしまう」「現場が納得しない」「評価のための目標になっている」という声は後を絶ちません。特にフラット化やネットワーク型の組織が増える中で、管理よりも自律的な成長を促す運用が求められています。本記事では目標達成に向けたマネジメントの基本を再確認し、成果につながる設計・運用のポイント、成功事例までを体系的に整理してみました。

目次[非表示]

  1. 1.目標達成に向けたマネジメントの基本と目的の再確認
    1. 1.1.ドラッカーの原点に立ち返る
    2. 1.2.制度ではなく「対話のプロセス」として運用する
  2. 2.成果が出る目標設定のポイント
    1. 2.1.目標設定のフレームを使い分ける
    2. 2.2.役割×スキル×行動指標の三層で設計する
  3. 3.形骸化を防ぐ運用プロセスの設計
    1. 3.1.1on1・振り返り・対話のループ設計
    2. 3.2.モチベーションを高めるフィードバックの技術
  4. 4.フラットな組織でのマネジメントのあり方 ― 伴走支援スタイルへ
    1. 4.1.上下関係依存から「伴走支援スタイル」へ
    2. 4.2.ネットワーク型組織における協働の指標化
  5. 5.成功事例から学ぶ実践ヒント
    1. 5.1.制度設計のあり方を抜本的に見直す(製造業・金融業)
    2. 5.2.「目標の見える化」施策で共創文化を育てる(IT企業)
  6. 6.研修や施策に落とし込む際のポイント
    1. 6.1.階層別研修と管理職の役割再定義
    2. 6.2.マネジメントのためのマニュアルや運用ツールの整備
  7. 7.まとめ
  8. 8.FAQ(7問)
  9. 9.引用・参照元とURL一覧

目標達成に向けたマネジメントの基本と目的の再確認

目標達成を促していくマネジメントは、評価制度とは切り離して考え、組織の成果と個人の成長をつなぐ「対話のプロセス」と捉えましょう。まずは本来の目的と背景を再確認し、なぜ今再構築が求められているのかを整理します。

ドラッカーの原点に立ち返る

ピーター・F・ドラッカーは「マネジメントとは成果に責任を持つことである」と述べ、目標管理の原点として「自己統制」を重視しました。つまり、上司が管理するのではなく、本人が主体的に目標を設定し、成果にコミットするプロセスを支援することが目標達成に向けたマネジメントの本質です。しかしながら日本企業では、評価のための管理のような捉え方にすり替わりやすく、目的が曖昧になっているケースが多く見られます。原点に立ち返ることで、本当に価値のあるマネジメントのスタートラインを描き直すことができます。

制度ではなく「対話のプロセス」として運用する

目標管理制度が形骸化する理由の一つは、「年1回から2回の評価のためのツール」になってしまう点です。実際には「目標設定定期確認 → 振り返り学びの抽出次の挑戦」というプロセスが連続しており、ここに対話が伴わないと納得感も成長実感も生まれません。また、管理職の質問力、フィードバック力、傾聴姿勢などの「対話スキル」が低い場合、制度自体が機能しなくなるリスクがあります。制度設計より前に、対話の技術と意識改革から着手すべきと言えます。

▶図1:目標達成のためのマネジメントを対話プロセスで捉える(例)

成果が出る目標設定のポイント

成果につながる目標設定は「やり方」ではなく「構造設計」が鍵です。複数のフレームを理解し、役割、スキル、行動への落とし込みを整理します。

目標設定のフレームを使い分ける

目標設定は1つのフレームでは不十分です。以下を併用することで立体的な設計が可能になります。

KGI…事業や部門の最終成果を定義するもので、活動の最終ゴールは何かを示す指標です。

KPI…成果につながるプロセスを管理するもので、日常的に管理すべき行動や状態を数値化したものです。

OKR…挑戦と成長を促すための目標管理であり、あえて高い目標を掲げて進捗をオープンにレビューします。

GROWモデル…メンバーから解やアイデアを引き出す対話のフレームであり、1on1の機会などで有効です。

なかでもGROWモデル(GoalRealityOptionsWill)は、管理職が目標設定をメンバー本人の言葉で引き出す際に有効です。単に確認するのではなく、問いかけながら進めていくのがポイントになります。

目標設定の各フレームの主な目的と現場活用例は下記を参照してください。

▶表1:目標設定フレームの比較

フレーム

主な目的

現場活用例

KGI

最終成果の明確化

部門の業績指標に使用

KPI

プロセス管理

デイリー・週次の確認

OKR

チャレンジ促進

定期レビューと連動

GROW

対話による成長促進

1on1での質問項目作成

これらのフレームを併用することで立体的な目標設計が可能になります。

役割×スキル×行動指標の三層で設計する

実務では、役割、スキル、行動指標の三層で整理すると現場が納得しやすくなります。役割期待実行能力日常の行動へのブレイクダウンが自然につながり、管理職のフィードバックも具体化します。特に若手や中堅層のメンバーには、「曖昧な期待」ではなく「行動レベル」に落とし込むことが有効です。

形骸化を防ぐ運用プロセスの設計

目標設定ができても、運用の質が低ければ成果には結び付きません。定着のための「仕組み化」と「振り返り設計」を整理します。

1on1・振り返り・対話のループ設計

1on1は目標達成に向けたマネジメントにおいては中心機能と言って良いでしょう。上司が聞き役になり、進捗の確認よりも思考の整理と支援を行うことが鍵になります。ポイントは、「振り返りを行う学びに変える次の打ち手を講じる」のループ設計を固定することです。これができれば、自然と目標管理は「成長サイクル」として機能します。

2:成長サイクル

モチベーションを高めるフィードバックの技術

特に中堅層では、成果が出ている時よりも「停滞期」の対話が重要です。なぜなら、中堅層は自らの成長に伴い、達成困難な高い目標を掲げるようになるため、上司からの助言やアドバイスが期待される対話は現状を打破する有効な機会になるためです。失敗を否定するのではなく、再挑戦に必要な視点の整理や行動変容のヒントを提供できるかが管理職の力量になります。事実と感情を切り分け、励ましと問いかけのバランスを取ることがポイントです。

以下は管理職がとりがちな4つのスタイルを示してみました。伴走支援スタイルが昨今のマネジメントにおいて重視されています。

▶表2:支援スタイルとその特徴

スタイル

特徴

高挑戦スタイル

メンバーに高い目標を課して常にチャレンジさせる。メンバーが疲弊感を抱くことにつながるので注意が必要。

伴走支援スタイル

メンバーに寄り添いながら支援を行う。コーチとプレイヤーとの関係で励ましながら支援する。

叱責スタイル

厳しい態度や姿勢で指導を行いメンタルの部分でも鍛える。部下との信頼関係が前提。ハラスメントと捉えられないよう注意が必要。

放任スタイル

主にできるメンバーに対して仕事そのものを任せる。任せっ放しにならないよう注意する。任せても支援は必要。

フラットな組織でのマネジメントのあり方 ― 伴走支援スタイルへ

指示命令による管理から、協働・支援・越境を前提とした組織へと移行が進んでいます。そのような中でのマネジメントのあり方を再整理してみました。

上下関係依存から「伴走支援スタイル」へ

ヒエラルキー型のマネジメント前提では、若手世代の価値観とミスマッチが生じがちです。最近では上司=管理者ではなく、挑戦を支援するファシリテーターまたは「伴走者」として捉える考え方が広がっており、指示型ではない対話重視型の指導、心理的安全性の確保が重視されています。昨今の管理職研修では、「支援型マネジメント」への意識改革を強化する傾向が見られます。

ネットワーク型組織における協働の指標化

プロジェクト型、越境型の働き方が進む中では、個人目標だけではなく「協働」を評価する仕組みが必須となります。コミュニケーション頻度、支援・貢献の行動指標、越境プロジェクト参加などの要素をKPIとして設計する企業が増えています。欧米の一部の企業では「貢献・共創を横軸においた人材評価」が進みつつあります。

▶表3:フラットな組織における目標管理の指標(例)

指標項目

現場での活用例

支援・貢献度

 他部署への協力状況を数値化

対話頻度

 1on1や会議への参加度合いで確認

越境機会

 複数の会社グループや部門を跨ぐプロジェクトへの参加率

成功事例から学ぶ実践ヒント

実際の企業事例をご紹介しましょう。管理の制度設計から踏み込んだ事例、目標の見える化に取り組んだ事例です。典型的なケースとしてまとめています。

制度設計のあり方を抜本的に見直す(製造業・金融業)

ある製造業では、KPIが単なる「作業数の管理」に終始していました。これでは社員は仕事に対するやりがいを感じることができず、目的意識も薄れてしまいます。組織内には疲弊が目立ち一体感も損なう状況でした。そこで、目標管理の制度設計を以下の3層で整理し運用を始めました。

1.役割期待の明確化

2.スキルの指標整理

3.行動レベルへのブレイクダウン

役割期待が明確になることで個人の目標意識も高まりました。これは組織チームのエンゲージメントの向上にも大きく影響します。求められるスキルが整理され、自身の能力のレベル度を測ることができ、次なる成長のステップが明確になりました。また、具体的な行動レベルが可視化されることで誰もが実践しやすくなりました。

同様に、ある金融業では、評価目的ではなく「能力開発支援のプロセス」として目標管理の制度を再定義した結果、自律的なチャレンジャーの増加につながりました。

「目標の見える化」施策で共創文化を育てる(IT企業)

あるIT企業においては、OKR形式を週次で運用することで「目標の見える化」を実現しました。取り組んだ施策は次のようなものです。

  • Slackで目標と進捗を共有

  • 壁打ち・支援者を募るチャンネルを設置

  • OKR Review Dayを月1回実施

この仕組みにより、「上司と部下」ではなく「チーム全員」が目標に関与できるスタイルへ移行することができ、様々な仕事に関するノウハウの共有化と他組織への興味関心が高まりました。今後はビジネスに関するコラボレートにも期待が寄せられています。

研修や施策に落とし込む際のポイント

マネジメントの制度を敷いたでは社内定着はなかなかできるものではありません。研修、仕組みづくり、社内浸透策の視点で捉え、それらを実行することで定着化を図ります。

階層別研修と管理職の役割再定義

管理職研修では、目標達成のためのマネジメントそのものの考え方の理解も重要ですが、「対話スキル」の強化も前提として大切になります。若手メンバーにはコーチング型指導による思考整理、中堅メンバーには役割期待の明確化、管理職には伴走支援型マネジメントが重要と言えるでしょう。特に管理職の役割については、現在の市場環境や自社の事業戦略をよく理解した上でどのようなマネジメントが必要になるのかを自ら考えてもらうことも重要です。

階層ごとにアプローチが異なるため、研修設計では「階層別×スキル別」の構造を意識しながら設計し運用すると効果的です。

マネジメントのためのマニュアルや運用ツールの整備

集合研修のような教育だけでは定着化させることは難しいことも多いでしょう。今の時代そして自社のビジネスに合った運用マニュアルと目標達成のための管理ツールも一緒に整備して、定着化に向けて推進していくことが大事になります。

▶表4:研修・施策への落とし込み(例)

施策

目的

内容

1on1研修

(組織ぐるみ)

対話スキルの向上

実践型コーチングモデルの理解、質問集の提供によるコーチング実践

管理職研修

支援型マネジメント構築

役割期待、効果的なマネジメント手法、ケース学習、実践計画

運用マニュアル

運用定着

目標達成のために仕事のプロセスの中で何をどのように具体的に実行するかをわかりやすく可視化

まとめ

目標達成に向けたマネジメントは、「自律性と成長を引き出す対話プロセス」です。形骸化を防ぐためには、目的の再定義、三層構造による設計、③1on1・振り返りの固定化、協働指標の導入、研修などによる定着化の5つが鍵となります。また、目標設定の複数のフレームを参考に検討することで、現代のネットワーク型組織にも適応できる設計が可能になります。まずは「対話・振り返り・学びの循環」が機能しているか、現場観察から始めることが実務の第一歩となるでしょう。

FAQ7問)

Q1:評価につながると、現場が本音で話さなくなります。どうすべきでしょうか?

A:施策としての1on1では思考整理の場と明確化し、成果確認の場とは切り分けることで心理的安全性を保つ事例が増えています。

Q2:若手の目標が低くなりがちです。支援方法はありますか?

A:コーチング型の指導が有効でしょう。目標設定より前に「現状の整理」「可能性探索」「意思の確認」という順で引き出すと、自分事化しやすくなります。

Q3MBOOKRはどちらを使うべきですか?

A:「安定運用」にはMBO、「挑戦促進」にはOKRと使い分ける設計が一般的です。両方を併用し、部門ごとに使い分けるケースも増えています。

Q4:他部署との協働をどう評価すれば良いですか?

AKPIに「支援・貢献」の行動指標を入れる事例があります。協働の頻度、越境プロジェクト参加、情報提供の回数などの定量化も可能です。

Q5:管理職の負担が大きくなりませんか?

A:一部企業では「1on1ファシリテーター制度」を導入し、管理職以外にも対話の役割を分担しています。支援者を分散する工夫も有効です。

Q61on1をしても成果につながらないことがあります。

A:振り返りのフレームが曖昧な可能性があります。PDCAではなく「学習の抽出」を重視し、次の打ち手を明確化するループにすると機能しやすくなります。

Q7:研修を実施した後、運用はどう支援すべきですか?

A:初年度のみ伴走型サポートを入れる方法があります。研修直後だけでは定着しないため、実務支援と組み合わせる仕組みが有効です。

引用・参照元とURL一覧

1.経済産業省「人材版伊藤レポート2.0」(2020

https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220513001/20220513001.html

2.Google re:WorkOKR Guide」(2019

https://rework.withgoogle.com/intl/jp/guides/

3.厚生労働省「令和6年労使コミュニケーション調査 結果の概況」(2024

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/18-r06gaiyou.html

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山﨑 俊樹
山﨑 俊樹
サイコム・ブレインズ 専任講師 千葉大学工学部工業意匠学科卒業後、印刷関連メーカーに入社し企画宣伝部門にて勤務。製品ユーザー向け広報誌の企画取材や多数の業界イベント企画に携わり、営業支援業務全般を習得する。1994年当社に転職。 これまでの営業支援ノウハウを活かし、教育プランナーとして大手中堅顧客企業の研修プログラムおよび教材・マニュアル開発に尽力。並行して数々の顧客企業の研修講師を担い、実績を挙げた。 2008年当社営業力強化グループの営業マネージャーに就任。その後ジェネラルマネージャー、執行役員を経て、顧客企業の業績向上と社員の能力開発に貢献。2025年4月より業務委託による働き方にシフト。現在は講師業務を中心に顧客企業の支援を行っている。長年にわたり Jazz Saxophone Player として、都内を中心に自作曲を含めた演奏活動も展開中。 【保有資格】HOGAN ASSESSMENT認定トレーナー、DiSC認定トレーナー

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