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海外事業で成果を出すグローバル人材に必要な5つのスキルとは?

海外事業を担当できる日本人材を育てたい――その際にまず「語学力の高さ」を重視して選抜を行う企業は少なくありません。しかし、実際のグローバルビジネスでは、語学力が高いだけでは十分に役割を果たせない場面があります。

海外旅行や留学経験がある人材であっても、

・商談、現地パートナー企業との交渉
・本社と現地の調整

といった実務の中では、文化や価値観、意思決定スタイルの違いに直面し、思うように成果を出せないケースが非常に多く見られます。ある統計では日本人赴任者の約40%は赴任地でのミッションを達成できないと言われており、残念ながらミッションを遂行できずに任期途中で帰国せざるを得ないケースもあるようです。

語学力や、商品や技術に関する専門知識を備えていても、プロジェクトが思うように進まないことで自信を失ったり、強いストレスを感じたりすることもあります。

その結果、派遣した企業も本人も思いもしなかったメンタル不調や、日本の常識と海外との文化の差異に起因する意図せぬハラスメント問題につながるケースがあり、そこにお悩みの企業様も多いようです。

こうした問題は、個人の能力や努力不足ではなく、グローバルビジネスの遂行に必要な知識・スキルを「事前に習得しておく」ことで、未然に防げる可能性が高まります。

本記事では、海外事業で成果を出すために求められるグローバル人材に必要な能力・知識・スキルを、教育・育成の観点から整理しています。

個人の資質や経験に委ねがちなグローバル人材育成を、組織として考えるための視点として、お読みいただければ幸いです。

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目次[非表示]

  1. 1.選抜・育成の課題と、海外事業の現場で当事者が直面する課題
  2. 2.グローバルの現場で事業を推進するために求められる5つの“力”とは
  3. 3.海外事業で成果を出すグローバル人材に必要な、5つの力を構成する5つの“スキル”
  4. 4.海外事業で求められるスキル(必要な能力)は「役割」によって異なる
  5. 5.お役立ち関連コラム
  6. 6.MBK Wellnessのソリューション
  7. 7.まとめ

選抜・育成の課題と、海外事業の現場で当事者が直面する課題

グローバル人材の不足は、多くの企業に共通する課題です。

その背景には、単なる人材数の問題だけでなく、「海外事業を任せられる人材とは、どのような力、知識・スキルを備えているべきか」が十分に言語化・共有されないまま、人材配置や育成が行われている、という構造的な課題があるようです。

こうした状態のまま海外事業にアサインされ続けていると、たとえば、

  • 自ら意思決定することを避け、調整役に徹してしまう
  • 関係者間の調整に時間を要し、事業スピードが上がらない
  • 文化・商習慣の違いを踏まえた交渉や合意形成ができない
  • 担当者の力量に成果が大きく左右されてしまう

といった課題や状態に陥るリスクを、会社が常に抱えている、ということになります。

こうした課題は、ともすると「経験を積めばできるようになる」、あるいは「個人の能力や努力の問題」と捉えられて終わってしまう可能性がありますが、実は、海外事業でパフォーマンスを発揮するために必要なスキル要件が定義され、そのスキルを習得するための体系的な学習機会が十分に用意されていれば、回避できていた可能性があります。

つまり、「自社の海外事業で成果を出す人材は、どのような力を備えている必要があるのか」を言語化し、その力が段階的に身についていくように教育・育成体系を整備することが、グローバル人材育成・選抜を成功に導く出発点になります。

グローバルの現場で事業を推進するために求められる5つの“力”とは

実務の現場では、英語ができることと、現地でコミュニケーションをとって海外事業を推進できることはイコールではありません。成果を出せる人材には、以下のような“ビジネス遂行力”が求められます。

  • 不確実な状況でも判断し、前に進める力(=意思決定力・推進力)

海外では、情報が揃わない状態で判断を求められる場面が日常的に発生します。「もう少し情報を集めてから」「本社の意向を待つ」といった姿勢では、機会を逃してしまうことも少なくありません。限られた情報の中で仮説を立て、判断し、必要に応じて修正しながら前に進める力が成果を左右します。

  • 主張が強い相手との落とし所をつくる力(=交渉力・合意形成力)

日本では暗黙の了解で進むことがありますが、海外の対立は珍しいことではありません。対立を避けるのではなく、前提条件や論点を整理し、合意可能な着地点を見つけていく力が求められます。感情ではなく構造で交渉する力は、ビジネスを前に進めます。

  • 本社と現地の狭間で利害を整理し、行動につなげる力(=翻訳力・調整力)

本社と現地では、評価指標や優先順位が異なることが多くあります。どちらかの言い分をそのまま伝えるだけでは対立が深まるだけです。双方の事情を理解した上で、現実的な選択肢に翻訳して提示する力が必要です。

  • 異なる価値観を前提に、判断基準を組み立て直す力(=異文化理解力・判断軸の調整力)

日本式の「正解」や「常識」が通用しない場面は数多くあります。相手の価値観や、商慣習、文化的背景なども理解した上で、判断軸を柔軟に組み立て直せるかどうかが、誤解や衝突を減らします。

  • プレッシャーのかかる環境でも、折れずにやり切る力(=レジリエンス・セルフマネジメント力)

海外事業では、思うように物事が進まない状況や、正解が見えないまま判断を求められる場面が続くこともあります。そうした環境の中でも感情に振り回されず、自分の状態を整えながら、粘り強く行動を継続できる力が成果を支えます。不確実性やプレッシャーの高い環境下でも、冷静に判断し続けるために必要なビジネススキルです。

このように、海外事業で成果を出している人材は、語学力や専門知識だけでなく、状況に応じて判断し、関係者と調整しながら事業を前に進めるために必要な、いくつかの力を組み合わせて発揮しています。

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次章では、これらのビジネス遂行力を身に付けるために、会社が教育支援できることについて解説します。

海外事業で成果を出すグローバル人材に必要な、5つの力を構成する5つの“スキル”

海外事業を推進するために必要な力は、過去の当事者からの意見や感覚や経験則として語られがちですが、海外事業で成果を出せる人材の選抜・育成を成功させるためには、教育や研修で強化できるスキル・知識として定義する必要があります。

そこで本章では、前章で整理したビジネス遂行力を、個人の「能力」ではなく「スキル」強化として教育支援しやすいように、5つのスキルとして示します。

1.戦略理解・伝達
事業の目的・狙い・優先順位を理解し、相手に合わせて噛み砕いて伝える必要があります。事業構造や収益モデルなど、経営視点で伝える力がなければ、判断や調整が表層的なものになってしまいます。

2.異文化コミュニケーション
文化・価値観・意思決定の基準が異なる前提で対話し、誤解を調整する必要があります。文化や価値観の差異がビジネスコミュニケーションに及ぼす影響について理解し、対処する力は海外事業に携わるうえで必須です。

3.利害調整・合意形成
海外事業は関係者が多く、利害関係も複雑です。相手の立場や動機を読み取りつつ、双方にとって実現可能な着地点をつくる力が求められます。特に調整・交渉術は習得しておくべき基礎スキルと言えます。

4.意思決定・課題解決
正解がない状況でも前に進める力、必要な情報を取りに行く力、仮説を立てて判断する力が必要です。不確実性が高い海外事業では、「完璧な情報が揃うまで待つ」のではなく、「ある程度の十分な情報で、早く前に進む」意思決定が求められます。ゆえに、論理的思考や意思決定フレームワークの理解と習得は必須です。

5.信頼関係構築
海外事業の成功は、最終的には「人と人の関係性」に大きく依存します。ビジネスにおける異文化の影響を理解し、双方のメリットを提示しながら、相手から「この人となら一緒に進めたい」と思ってもらえる関係性づくりが、結果として事業の推進力につながります。

▼関連記事

・経済産業省が定義する「グローバル人材」に求められる3つの要素などご紹介しています。

・グローバルで活躍する“リーダー”に求められる能力について解説しています。

海外事業で求められるスキル(必要な能力)は「役割」によって異なる

ここまで、海外事業で成果を出すために必要な能力を5つのスキルとして整理してきました。とはいえ、これらのスキルをすべての人に、同じレベルで求めることは不可能です。どの役割にどのスキルが特に重要で、身につけておくべきかを整理することで、選抜や育成がしやすくなります。例えば、

事業責任を担うポジションの場合:

海外事業の立ち上げや拡大を担う人材には、他のポジションと比較した場合、

• 戦略理解・伝達
• 意思決定・課題解決

といったスキルが特に重要になります。

不確実な状況でも方向性を示し、判断を下す力が、事業のスピードと成果を左右します。

本社と現地をつなぐ調整役の場合:

現地法人や海外パートナーとの橋渡し役には、

• 戦略理解・伝達
• 異文化コミュニケーション
• 利害調整・合意形成

の比重が高くなります。

単に情報を伝えるのではなく、立場や背景の違いを踏まえて整理し直す力が求められます。

専門領域を担うメンバーの場合:

技術などの専門性を活かして海外事業に関わる場合には、

• 利害調整・合意形成
• 信頼関係構築

が成果に影響します。

専門スキルが高くても、関係構築ができなければ、力を十分に発揮しきれません。

このように、「誰に・どの役割を期待しているのか」を起点に考えることで、会社が当事者に期待する役割が明確となり、当事者にとっても、現地における交渉や意思決定がしやすくなります。また、選抜・育成においても、対象人材に求めるスキルの優先順位や到達レベルが明確になり、現場で本当に必要な知識・スキルを事前に習得できる教育設計が可能になります。

たとえば、以下のように整理してみると、「全員に同じ能力を求める」のではなく、役割に応じて重点的に強化すべきスキルが異なる可能性があることが分かります。

▶図表1: 役割別スキルマップの例

※ ★の数は「重要度」の目安

役割 / スキル

戦略理解・伝達

異文化コミュニケーション

利害調整・合意形成

意思決定・課題解決

信頼関係構築

海外事業責任者

★★★

★★

★★

★★★

★★

本社-現地の調整役

★★★

★★★

★★★

★★

★★★

専門領域担当(技術)

★★

★★★

★★

★★★

上記はあくまで例であり、各企業が、自社の事業状況にあわせて、定義することが必要です。ただ、このような視点を持って整理することによって、

  • 選抜時に何を見ればよいのか
  • 育成で何を優先すべきか
  • 配置ミスをどう防ぐか

といった判断が、より具体的にできるようになります。

まずは、自社の海外事業にどのような役割が存在しているかを洗い出し、それぞれの役割に対して、どのような知識・スキルが成果に直結するのかを整理してみると良いでしょう。

以下では、グローバル人材の選抜・育成に関連した記事や、グローバル人材の選抜・育成を支援する研修、映像教材、アセスメントなどご紹介しています。貴社のグローバル人材の選抜・育成、教育体系検討の際のお役に立てば幸いです。

お役立ち関連コラム

▼日本人として持つ国民性を踏まえ、グローバルな環境で自信をもって最大限のパフォーマンスを発揮するためのヒントをご紹介しています。

▼赴任者の現状と、日本本社が赴任者に実施して欲しい支援策についてお伝えしています。

▼外国人社員の離職理由と日本企業への期待についてお伝えしています。

MBK Wellnessのソリューション

【公開講座】

2013年から毎月1回開講を続け、年600名が受講される、赴任者に必要なマインドの醸成、困難にくじけず柔軟に対応するための異文化適応力の向上が期待できる公開講座です。

【研修プログラム】

以下の研修プログラムは、異文化マネジメントに必要な「文化的価値観の差異がビジネスに及ぼす影響」と「コミュニケーション法」、演習を交えながら習得できるプログラムです。

【アセスメント】

以下のアセスメントでは、文化的価値観の違いによって起こりうる問題を事前に把握し、ビジネスでより良い関係を構築する手がかりを得ることができます。

【映像教材】
以下のページでは、グローバルビジネスで成果を出すために必要な知識・スキルを映像教材の視聴で学ぶことができる映像教材をご紹介しています。

まとめ

海外事業で成果を出すグローバル人材には、語学力に加えて、戦略理解・伝達力、異文化コミュニケーション、利害調整・合意形成、意思決定・課題解決、信頼関係構築といった複数のスキルが、グローバル人材に必要な能力として求められます。

重要なのは、これらを個別にバラバラに捉えるのではなく、「海外事業を前に進めるためのスキルセット」として整理することです。そうすることで、なぜ成果が出にくいのかを構造的に捉えられるようになります。

また、すべての人に同じレベルのスキルを求めるのではなく、海外事業における役割に応じて、どのスキルを優先し、どのレベルを期待するのかを整理することが重要です。

まずは、自社の海外事業や越境業務において、どの場面で、どの役割の人材に、どのスキルが成果に影響しているのかを言語化してみてください。スキル要件が明確になることで、育成・選抜・配置といった施策も、より一貫性のある判断軸で検討できるようになります。

もし、現状整理や育成設計の検討に難しさを感じる場合は、現状の棚卸しから育成プランの設計まで、専門家の視点を取り入れることも一つの選択肢です。当社のコンサルタントがご支援いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

■本記事の監修者■

ビジネスマスターズ・マーケティングチーム
ビジネスマスターズ・マーケティングチーム
教授システム学修士であり、eラーニングシニアコンサルタントであるデジタルラーニング事業部門長 花木喜英率いるビジネスマスターズ・マーケティングチーム。企業研修登壇実績10年以上・年間100本以上をこなすサイコム・ブレインズ/プログラムディレクター 小西功二とメンバー3名で、企業とビジネスパーソン双方が利を得る教材開発をコンセプトに、学術理論を徹底研究し開発されたビジネスマスターズを、世に広めるべく尽力しています。

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