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なぜ管理職育成が重要なのか? 成果につながる育成手法

「管理職が育たない」「任せられる人材がいない」。多くの企業で聞かれるこの悩みの背景には、個人の資質だけでなく、育成設計や役割定義が十分に整っていないことが影響しているケースが多く見られます。VUCABANIと呼ばれる不確実な時代において、管理職は「指示を出す存在」ではなく、「組織の成果を生み出し続ける装置」としての役割が求められています。

本記事では、なぜ今あらためて管理職育成が重要なのかを整理したうえで、集合研修だけに依存しない育成手法、昇格前から取り組むべき施策、成果につながった企業事例を体系的に解説します。管理職育成を「コスト」ではなく「戦略投資」に変えるヒントを提供します。

目次[非表示]

  1. 1.なぜ今、管理職育成が企業の成否を左右するのか
    1. 1.1.環境変化が管理職の難易度を高めている
    2. 1.2.管理職の質が組織成果を左右する
  2. 2.管理職育成がうまくいかない構造的な課題
    1. 2.1.研修と現場が分断されている
    2. 2.2.昇格後に育成を始めている
  3. 3.成果につながる管理職育成の基本設計
    1. 3.1.役割定義と期待行動を明確にする
    2. 3.2.アセスメントを基点に育成する
  4. 4.集合研修だけに頼らない育成手法
    1. 4.1.1on1・メンタリングの活用
    2. 4.2.実務連動型プロジェクト育成
  5. 5.管理職候補者・昇格前リーダーへの育成アプローチ
    1. 5.1.早期からマネジメント視点を持たせる
    2. 5.2.昇格試験と育成の接続
  6. 6.大手中堅企業に見る管理職育成の成功事例
    1. 6.1.エネルギー関連商社A社:営業管理職のマネジメント強化と営業研修への参加
    2. 6.2.IT系企業B社:座学中心の短時間コースから実践型育成プログラムへ移行
  7. 7.まとめ
  8. 8.FAQ(7問)
  9. 9.引用・参照元とURL一覧

なぜ今、管理職育成が企業の成否を左右するのか

管理職を取り巻く役割は、この10年で大きく変化しました。かつては「現場を回す」「上からの指示を伝える」ことが主な役割でしたが、現在は現場管理と部下育成を同時に担いながら、不確実な環境下で意思決定を行う存在へと変化しています。管理職の力量は、チームの成果や事業のパフォーマンスに大きな影響を与えると言えるでしょう。

環境変化が管理職の難易度を高めている

VUCABANIと呼ばれる不安定な経営環境では、「前例」や「過去の成功体験」が通用しにくくなっています。管理職には、正解の見えない状況下でも仮説を立て、判断し、修正し続ける柔軟性が求められます。

また、トップの戦略や方針をそのまま伝えるだけでは現場は動きません。組織の文脈やメンバーの力量に合わせて解釈し、行動に落とし込む「翻訳力」が不可欠です。管理職は、経営と現場をつなぐ「接着剤」としての役割を担っており、その重要性はかつてないほど高まっています。

管理職の質が組織成果を左右する

管理職の振る舞いや意思決定は、エンゲージメントや離職率、生産性などに強い影響を与える重要な要因の一つとされています。信頼関係を築き、挑戦を後押しする管理職のもとでは、メンバーが主体的に動きやすくなり、結果として成果も安定します。

一方で、関わり方が不適切な管理職がいると、職場の雰囲気が悪化し、本来の力が発揮されません。企業調査や研究においても、上司の関わり方は職場環境や働きがいに影響を与える主要な要因の一つとして挙げられています。つまり、管理職の質は個人の問題ではなく、組織成果そのものを左右する経営課題なのです。

▶図1:管理職は現場に向けて翻訳と調整を行う

管理職育成がうまくいかない構造的な課題

多くの企業で管理職育成が思うように成果につながらない背景には、個々の管理職の資質以前に、育成の設計思想そのものに共通した構造的なズレが存在しています。研修の内容が不足しているというよりも、「どのタイミングで」「何と連動させ」「どのように行動変容を促すのか」という全体設計が曖昧なまま進められているケースが少なくありません。その結果、せっかくコストと時間をかけた育成施策が、現場では十分に活かされない状況が生まれています。

研修と現場が分断されている

管理職研修でよく見られる課題の一つが、研修内容と日常業務が切り離されていることです。研修中は理解できたつもりでも、現場に戻ると忙しさに追われ、学んだフレームや対話手法を使う余裕がなくなってしまいます。また、上司や組織から「研修で学んだことをどう活かすのか」という期待やフォローがなければ、実践への動機づけも弱まります。

本来、研修はOJTや評価制度、1on1などと連動し、現場で試し、振り返り、修正する循環があって初めて意味を持ちます。研修単体で完結している限り、行動変容は起こりにくいのです。

昇格後に育成を始めている

もう一つの構造課題が、「昇格後から育成を始めている」点です。管理職に任命されてから初めてマネジメントを学ぶ場合、本人は不安や戸惑いを抱えたまま現場対応を迫られ、部下や上司にも余計な負荷がかかります。その結果、「とりあえず前任者のやり方を踏襲する」「プレイヤー業務に逃げる」といった行動が定着してしまうことも少なくありません。

管理職育成は、本来候補者段階から段階的に行うものです。早期にマネジメント視点を持たせることで、昇格後の立ち上がりを大きく改善できます。

▶表1:失敗しやすい育成パターンの例

教育手段

デメリット

単発的な研修

知識習得に留まりがちで、行動変容につながりにくい

属人的なOJT

教える人による質のばらつきがあり、再現性が難しい

昇格後の育成

役割適応が遅れて、現場に混乱を招きやすい

成果につながる管理職育成の基本設計

成果を出す企業の管理職育成には、偶然に任せない「設計思想」が存在します。単に研修を実施するのではなく、管理職という役割をどう定義し、どのように行動変容を起こし、どう現場で定着させるかまでを一貫して考え抜いている点が重要です。ここでは、管理職育成を成果につなげるための基本設計の要点を整理します。

役割定義と期待行動を明確にする

管理職育成がうまくいかない企業の多くでは、「管理職とは何を担う存在なのか」が曖昧なままになっています。プレイヤーの延長としての管理職なのか、チーム成果を最大化するマネジメント役なのか、この認識が揃っていないと、育成の方向性も定まりません。

そのため、まず取り組むべきは「役割定義の言語化」です。具体的には、成果責任の範囲、意思決定の水準、部下育成における期待行動、やってはいけないNG行動までをセットで示すことが重要です。これにより、本人の自己認識だけでなく、周囲の評価基準も揃い、育成と評価が一本につながります。

アセスメントを基点に育成する

管理職育成を感覚論に陥らせないためには、アセスメントの活用が有効です。HoganDiSC、アセスメントセンターなどを用いることで、リーダーシップスタイル、意思決定傾向、対人関係の癖といった要素を客観的に把握することができます。

重要なのは、アセスメントを選抜だけで終わらせないことです。結果を本人にフィードバックし、どの能力を伸ばすのか、どの行動を変えるのかを明確にした上で育成施策へ接続します。これにより、育成は画一的な研修ではなく、個別性のある成長支援へと進化します。

Hogan Hogan Assessment Systems社のアセスメントサービスです。

DiSCは、広くビジネス現場で活用されている行動特性アセスメントの一つです。

▶図2:役割定義・アセスメント・研修と実践・振り返りのサイクル例

集合研修だけに頼らない育成手法

集合研修は、管理職として必要な知識や考え方を体系的に学ぶうえで重要な手段です。しかし、多くの企業で「研修は実施したが、行動が変わらない」「現場に戻ると元に戻ってしまう」という課題が起きています。その理由は、管理職の役割そのものが知識職ではなく、実践職、判断職だからです。知っていることと、できることの間には大きな隔たりがあります。

そのため最近では、集合研修を「きっかけ」と位置づけ、現場での実践、内省、フィードバックをどう組み合わせるかが、育成成果を左右する重要な論点となっています。

1on1・メンタリングの活用

1on1やメンタリングは、管理職の育成において非常に有効な手法です。ポイントは「答えを与える場」ではなく、「考えさせる場」として設計することにあります。日々の意思決定や部下対応について振り返り、「なぜそう判断したのか」「他の選択肢はなかったか」を言語化することで、管理職としての思考の質が高まります。

特に、プレイングマネジャー型の管理職は、短期成果に引っ張られがちです。定期的な対話の場があることで、「視点を上げる」「感情を整える」といったメタ認知が促され、結果として安定したマネジメント行動につながります。

実務連動型プロジェクト育成

もう一つ重要なのが、実務と連動させた育成設計です。例えば、全社横断プロジェクトや経営課題をテーマにしたプロジェクトへの参画は、疑似的に「管理職としての意思決定・調整・巻き込み」を体験できる場になります。

実際の業務と切り離された演習ではなく、失敗すると影響が出るリアルなテーマだからこそ、当事者意識が生まれます。この経験を通じて、部門間調整の難しさや、自部門最適と全体最適の葛藤を体感することができ、管理職として必要な視野と判断力が鍛えられます。

▶表2:研修施策以外の育成手段の特徴(一部抜粋)

育成手段

特徴

1on1

(コーチング)

内省を促進させる。課題と対策を再認識したり発見したりすることを促す。

プロジェクト

リアルテーマを扱い、実践力が強化される。越境経験を得られることができる。

アセスメント

(知識とスキル)

現在地を認識することができる。施策前後の実施(before/after)で、行動変容を後押しする。

管理職候補者・昇格前リーダーへの育成アプローチ

管理職育成というと、昇格後の研修に力を入れる企業は少なくありません。しかし実際には、昇格前の準備段階でどれだけ質の高い育成ができているかが、その後の成否を大きく左右します。管理職になってから急に「人を動かす」「組織を運営する」視点を求められても、本人ならびに周囲ともに負荷が高く、失敗体験を積み重ねやすくなります。だからこそ、昇格前の段階から計画的にマネジメントへの助走を行うことが重要です。

早期からマネジメント視点を持たせる

昇格候補となるリーダー層に対しては、早い段階から「自分が成果を出す」視点だけでなく、「チーム全体で成果を出す」視点を持たせる必要があります。具体的には、後輩育成や役割分担、業務改善の主導といった経験を意図的に任せることが有効です。

単なる業務の延長ではなく、「なぜこの判断をするのか」「自分の関わりがチームにどんな影響を与えているか」を振り返る機会を設けることで、マネジメント的な思考回路が育ち始めます。この段階での経験が、昇格後の適応スピードを大きく左右します。

昇格試験と育成の接続

多くの企業で、昇格試験が「選抜のための関門」にとどまっているケースが見られます。しかし、本来あるべき姿は、昇格試験自体が育成プロセスの一部として機能することです。

例えば、アセスメント結果を本人にフィードバックし、強みと課題を言語化した上で、昇格前後での育成テーマを連動させます。そうすることで、本人は「評価されて終わり」ではなく、「次に何を伸ばすべきか」を明確に理解できます。昇格をゴールではなく、成長プロセスの通過点として設計することが重要です。

大手中堅企業に見る管理職育成の成功事例

成果を出している企業は、管理職育成を「人事施策」ではなく「経営戦略」として位置づけています。単に研修を実施するのではなく、経営課題の解決や将来の競争力向上と直結させている点が共通しています。その結果、管理職の行動が変わり、現場の意思決定速度やチームの生産性が着実に向上しています。以下に、実在企業の取り組みを参考に構成したケースをご紹介します。

エネルギー関連商社A社:営業管理職のマネジメント強化と営業研修への参加

A社では、当初支店長や営業所長などの管理職を対象にしたマネジメント研修を実施しました。戦略と商談に関する営業スキルおよび営業OJTスキルの習得、問題解決スキルの強化などシリーズで1年がかりで実施しました。研修と研修の間にはOJT実践を挟むことで、着実にOJT指導の実行力をつけていきました。これまでの属人的な指導方法から体系的な指導方法へと転換を図りました。

その後は、管理職の部下メンバーを対象に、営業スキルの研修シリーズを受講してもらいました。その場に管理職もオブザーブ参加させて、アドバイザーとして機能してもらいました。その結果、営業ノウハウの共有がさらに加速されるようになり、業績向上の実現に良い影響を与えています。

IT系企業B社:座学中心の短時間コースから実践型育成プログラムへ移行

B社では、座学中心の短時間の管理職候補者研修を長年実施してきました。多忙な受講者であり効率化を重視したためです。その座学中心の研修では成果は出ないと判断し、全面的に見直しを図りました。実践型のプログラムへの転換です。管理職候補者を小グループに分けて、実際の経営、事業課題(新規サービスの立ち上げ、組織再編など)をテーマにしたプロジェクトに参画させたのです。

候補者は、限られた権限の中で意思決定を行い、関係部署と調整し、成果を経営層に報告します。この過程で「判断の重さ」や「説明責任」を疑似的に体験できるため、昇格後のギャップが非常に小さくなりました。

結果として、管理職の意思決定スピードが向上し、現場の停滞感が改善したと評価されています。

まとめ

管理職育成で成果を出している企業に共通しているのは、「研修をやったかどうか」ではなく、「管理職の行動がどう変わったか」を起点に設計している点です。

アセスメントによる可視化、昇格前からの段階的育成、実務と直結した学習機会。これらを組み合わせることで、管理職は「任された人」から「成果を生み出す人」へと成長します。

管理職育成は短期施策ではなく、中長期で組織力を高める投資です。自社の経営課題と結びつけながら、育成を戦略的に再設計していくことが重要です。

FAQ7問)

Q1:管理職育成は何年くらい前から始めるべきですか?

A:理想は昇格の23年前からです。リーダー層の段階で準備を始めることで、昇格後の負荷を大きく減らせます。

Q2:管理職研修だけでは不十分なのでしょうか?

A:研修だけでは行動変容は起こりにくいものです。OJT1on1、実務連動プログラム施策と組み合わせることが重要です。

Q3:アセスメントは必ず導入すべきですか?

A:必須ではありませんが、育成の精度を高める有効な手段です。感覚に頼らない育成が可能になります。

Q4:小規模な企業や組織でも同様の育成は可能ですか?

A:可能です。集合研修や簡易的なアセスメント、プロジェクト型育成など、規模に応じた設計ができます。

Q5:管理職に向かない人は育成しても意味がないですか?

A:向き不向きはありますが、多くは「準備不足」が原因です。適切な育成で大きく伸びるケースも多くあります。

Q6:昇格試験はどのように見直すべきですか?

A:知識テスト中心ではなく、行動や判断プロセスを評価する仕組みやコンテンツに変えると育成につながります。

Q7:育成の成果はどのように測れば良いですか?

A:管理職本人の評価だけでなく、部下のエンゲージメントやチーム成果などを見ることが重要です。

引用・参照元とURL一覧

1.厚生労働省「職場における人材育成の現状」
https://www.mhlw.go.jp

2.Google re:WorkProject Aristotle
https://rework.withgoogle.com

3.Hogan AssessmentsLeadership Forecast
https://www.hoganassessments.com

4.ダニエル・ゴールマン Emotional Intelligence(エモーショナル・インテリジェンス)

5.日本生産性本部『管理職白書』

サイコム・ブレインズの研修プログラム

ホワイトカラーの生産性向上 - グローバルに通用する研修・アセスメント・映像教材|MBK Wellness株式会社 サイコム・ブレインズ事業本部

中級管理職|サイコム・ブレインズのデジタルラーニングサービス「ビジネスマスターズ」

マネジメント基礎スキルトレーニング|Business Masters Digital Learning Portal

山﨑 俊樹
山﨑 俊樹
サイコム・ブレインズ 専任講師 千葉大学工学部工業意匠学科卒業後、印刷関連メーカーに入社し企画宣伝部門にて勤務。製品ユーザー向け広報誌の企画取材や多数の業界イベント企画に携わり、営業支援業務全般を習得する。1994年当社に転職。 これまでの営業支援ノウハウを活かし、教育プランナーとして大手中堅顧客企業の研修プログラムおよび教材・マニュアル開発に尽力。並行して数々の顧客企業の研修講師を担い、実績を挙げた。 2008年当社営業力強化グループの営業マネージャーに就任。その後ジェネラルマネージャー、執行役員を経て、顧客企業の業績向上と社員の能力開発に貢献。2025年4月より業務委託による働き方にシフト。現在は講師業務を中心に顧客企業の支援を行っている。長年にわたり Jazz Saxophone Player として、都内を中心に自作曲を含めた演奏活動も展開中。 【保有資格】HOGAN ASSESSMENT認定トレーナー、DiSC認定トレーナー

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