
管理職研修おすすめテーマ5選――失敗しない研修選びのポイント
管理職に対する教育は、年々重要さを増してきています。外部環境の変化の激しさや働き方の多様化などによって、今の時代にあった教育施策を打っていく必要があります。本記事では、研修が失敗してしまう原因を理解した上で、今の時代に合った管理職研修をご紹介していきます。自社の管理職研修を企画する上で、参考にしていただけたらと思います。
目次[非表示]
- 1.はじめに:なぜ今、管理職研修が重要視されるのか
- 2.管理職研修が失敗する3つの原因
- 2.1.研修内容が実務と乖離している
- 2.2.本人の課題感に対する自覚が弱い
- 2.3.研修後のフォローが不十分
- 3.管理職研修おすすめ5選
- 3.1.① 戦略思考&ビジネスモデル創造研修(市場変化に強い管理職へ)
- 3.2.② 部下育成コーチング研修(行動変容を起こす対話力)
- 3.3.③ リーダーシップスタイル探索研修(自分の型を知る)
- 3.4.④ 課題発見×課題解決研修(実務に直結する問題解決力)
- 3.5.⑤ エンゲージメント向上のための心理的安全性づくり研修
- 4.研修を形骸化させないための3つのポイント
- 5.導入企業の成功事例
- 5.1.事例①:大手製造業A社…「プレイヤー管理職」から「育成型管理職」へ転換
- 5.2.事例②:通信業B社…新任管理職の早期つまずきを防止し、離職率を改善
- 5.3.事例③:IT企業C社…心理的安全性を軸に組織文化改革を実現
- 6.まとめ
- 7.FAQ(7問)
- 8.引用・参照元とURL一覧
はじめに:なぜ今、管理職研修が重要視されるのか
近年、管理職に求められる役割は大きく変化してきました。従来のような「業務遂行管理」「部門の数字達成だけを担う存在」では、チームが機能しなくなっています。VUCAやさらに世の中の混沌さを表現するBANIと呼ばれる不確実性の時代において、管理職が抱える課題は以下のように複雑化しています。
多様な価値観を持つメンバーの動機づけ
テレワーク下でのコミュニケーション最適化
高ストレス環境におけるメンタルケア
戦略的な意思決定と実行のスピード向上
協働と心理的安全性を高める組織文化づくり
これらの役割は、従来の「現場の延長線」だけでは身につきません。だからこそ、多くの企業が 管理職研修を見直し、体系的に「マネジメント力」「リーダーシップ」「戦略遂行力」を鍛えようとしています。
▶図1:従来と現代の管理職に求められる能力

管理職研修が失敗する3つの原因
多くの企業で「研修をやったが効果が出ない」という声が上がります。
その背景には、以下の典型的な失敗要因があります。
研修内容が実務と乖離している
座学中心の研修だけでは、現場の環境や業務課題と結びつかずに定着が難しくなります。特に管理職は多忙であるため、抽象的な話だけでは行動が変わりません。
自分の職場でどう活用するかが明確でない研修は、すぐに忘れられてしまうのです。
▶図2:どうして研修が機能しないのか

本人の課題感に対する自覚が弱い
管理職本人が「研修は会社の指示だから」と受け身の姿勢だと、学びが行動には結びつきません。重要なのは、研修前に以下の状態をつくることです。
現在の課題を棚卸できる仕掛けを作っておく
部下からのフィードバックを受けて内省を深めておく
組織課題と自分の役割とを紐づける整理を義務付ける
研修後のフォローが不十分
研修を一日だけのイベントにしてしまう企業は少なくありません。管理職研修の本質は、研修後の「行動変容の伴走」にあります。
実践の振り返りができる機会を設ける(フォローアップ)
研修受講者と上司との1on1(実践による変化の確認など)の継続
発展的な課題を設定しPDCAを回す仕組みを提供する
職場でのコーチやメンターの新設と配置
などの仕組みが必須です。
管理職研修おすすめ5選
管理職研修は「一度受ければ終わり」ではなく、役割と環境の変化に合わせて何を学ぶべきかが変わります。ここでは、現在の企業が直面している VUCAやBANI時代の複雑性に適応するために必要な5つのテーマを軸に構成しています。それぞれは単なる座学ではありません。行動変容につながるメソッドを中心に紹介します。
① 戦略思考&ビジネスモデル創造研修(市場変化に強い管理職へ)
近年最も注目されているものの一つが「戦略思考」です。管理職には単なるプレイヤーではなく、外部環境を踏まえてチームの方向性を言語化し、新たな戦略を立てて適切な意思決定を行う力が求められています。
●研修内容の例
3Cや5フォースなどを活用したフレームワーク実践
自社の強みと弱みを分析するSWOTワーク
新規事業テーマの構築(ビジネスモデルキャンバス)
経営視点での意思決定シミュレーション
●受講後の変化のポイント
上司の指示待ちではなく、自分で課題を設定しチームをリードできる
予算や人材などの制約の中での判断力が磨かれる
メンバーに示す「チームの地図」が明確になり、業務の迷いが減る
▶図3:市場把握・仮説立て・戦略立案・組織化・実行・PDCAのサイクル

② 部下育成コーチング研修(行動変容を起こす対話力)
管理職研修の中でも導入率の高い研修です。今の部下は「指示されれば動く」時代ではなく、部下自ら納得し自律的に考えることができるマネジメントが必要です。
●研修内容の例
対話の基本スキルを活用したコーチング実践
相手の価値観を引き出す質問法(オープンクエスチョンのトレーニング)
フィードバックの実践手法(成長を促すフィードバック、SBIモデル※ など)
1on1ミーティングの設計とシナリオ作成
※SBIモデルは、Situation、Behavior、Impact(状況・行動・影響)の頭文字をとったもので、相手の行動を適切に観察し、効果的にフィードバックするためのフレームワーク
●受講後の変化
部下の内側のやる気にアクセスする関わり方が身につく
指示命令中心から、対話中心のマネジメントに変化
問題解決能力の高い自律型メンバーが育つ
▶図4:部下との1on1ミーティングの例

③ リーダーシップスタイル探索研修(自分の型を知る)
管理職の悩みとして多いものの一つに「自分のリーダーシップが本当に合っているのか分からない」ということがあります。昨今の研修では、リーダーシップを無理に良い型に合わせるのではなく、自分の強みの延長で発揮する発想へと転換することが多くなっています。
●研修内容例
オーセンティックリーダーシップ診断
サーバント型/トランスフォーメーショナル型などの理解
ストレングスファインダーによる強みの構造化
実際のリーダー行動の映像分析とそれを参考に取り入れたロールプレイ
●受講後の変化
「自分の強み×チームの状況」で最適なリーダー像が描ける
メンバーの特性に合わせた関わりができる
雰囲気づくりが自然と上手になる
④ 課題発見×課題解決研修(実務に直結する問題解決力)
管理職が成果を出せない原因の多くは、「正しい課題」にたどり着けていないことにあります。現状の課題は何かを明文化し、課題となっている原因を突き詰めて分析し、効果的な解決策を立てる力が求められます。
●研修内容の例
ロジカルシンキング基礎(MECE、ロジックツリーなど)
問題と課題の違いの明確化
仮説思考の演習
データ思考(定量分析・定性分析)
●受講後の変化
「場当たり的な対応」が減り、仕事の再現性や発展性が期待できる
問題の本質をつかむスピードが速くなる
論理的思考によって会議の質が高まり生産性が向上する
⑤ エンゲージメント向上のための心理的安全性づくり研修
今、企業が注力し続けているものの一つが「心理的安全性」の確保とその維持でしょう。高いパフォーマンスを出すチームは必ず「安心して発言できる空気」を持っています。
●研修内容例
Googleの心理的安全性要因の理解
声かけ、傾聴、共感のスキル練習
雑談力やアイスブレイク手法、環境づくりのための工夫
ハラスメント知識と防ぎ方のケース演習
●受講後の変化
会議での発言量が増えて、質の高いアイデアが出る
メンバー間の相談やナレッジ共有が活発化
離職率の低下につながる
研修を形骸化させないための3つのポイント
多くの企業が悩むのが、「管理職研修を導入したのに現場で変化が起きない」という問題です。ここでは、研修を投資対効果の高い行動変容プログラムに変えるための3つの要素を紹介します。
① 現場の課題を言語化し目的から逆算して選ぶ
研修が失敗する最大の原因は、「本当に重要な問題」が特定されずに導入してしまうことにあります。
●失敗例
「他社が導入しているから」という理由だけで選ぶ
経営側と現場側で課題の認識がズレている
今の管理職のスキルボトルネックを把握せずに実施する
●成功のためのステップ
現場調査(ヒアリングと簡易サーベイ)を行う
管理職の困りごとのパターンを分類して吟味する
「どの行動を変えたいか」を明確にする
変えたい行動に合った研修テーマや研修プログラムを設計する
この順番を守ると、研修の狙いが明確になり、現場とのズレがなくなります。
② 研修後3ヶ月の実装フェーズを設計する
研修が形骸化する典型的なパターンは、知識は増えたが現場で使われないというものです。人が行動を変えるには、「学び」→「試す」→「振り返る」のサイクルが複数回必要です。
●研修後に設定すべきフォロー施策
月1回のオンライン振り返り会
管理職同士のピアラーニング
1on1のチェックシート運用
行動目標の小さな達成報告(マイクログッド)
ショート動画による振り返り教材を提供
これらは少し面倒に見えますが、定着化という点においては有効と言えるでしょう。
●なぜ実装フェーズが重要なのか
学習後、時間の経過とともに記憶が低下することが知られている
フォロー施策があると定着率が伸びる(ある企業では3倍近く伸びた事例もある)
管理職同士の学びは行動につながりやすい(同質性効果)
③ 上司(部長・役員)を巻き込み現場での支援をつくる
管理職の研修は、当事者の管理職だけで変化を起こすことはできません。最も効果が出るのは、管理職の上位層である部長や役員が協力するパターンです。
●なぜ巻き込みが重要なのか
部長が「行動変容のコーチ」になると継続率が高まる
現場での行動を「見てくれる人」がいると主体性が出る
上の層が変わらない、あるいは関与しない組織では、管理職の行動は変わらない
●巻き込み方の具体例
部長も同じ研修のダイジェスト版を受講する
管理職の行動指標を部長会議で共有する
行動変容の発表会を部長が参加してコメントする
研修内容に関する月1回の1on1を実施する
●効果の実感ポイント
部下育成や会議運営の改善が現場に広がる
チーム文化にまとまりが生まれる
組織のコミュニケーションレベルが一段上がる
導入企業の成功事例
管理職研修は、単なる知識提供ではなく、「行動変容」と「組織文化の変化」まで踏み込んでこそ成果が現れます。以下では、実際に研修を導入し大きな改善を遂げた3社のケースを、実在企業をモデルにした事例として紹介します。
事例①:大手製造業A社…「プレイヤー管理職」から「育成型管理職」へ転換
A社では長年、「優秀なプレイヤーがそのまま管理職になる」という構造が続き、管理職の多くが自分の仕事をこなすことに集中していました。そのため、部下の育成やチームビルディングが後回しになり、部下からは次のような声が上がっていました。
「上司が忙しすぎて相談できない」
「目標設定が曖昧で、何を求められているか分からない」
「会議が指示伝達だけで終わってしまう」
こうした課題を受け、A社はリーダーシップ基礎、1on1実践、フィードバック技法、コーチングを組み合わせた半年間の管理職研修を導入しました。
研修のポイント
月1回の集合型研修と実践課題を反復する
1on1の対話録音を提出してもらい、専門講師がフィードバックする
部下アンケートによる行動変容の可視化を行い共有する
研修開始から3か月後、部下満足度調査では「上司からのサポート」項目が約35%向上しました。また、業務改善提案数が前年同期比で1.8倍に増加し、チーム全体に「相談しやすさ」と「自走力」が生まれました。
A社が大きな変化を得られた理由は、「スキル研修+行動のモニタリング+フィードバック」というトライアングルが機能したためです。
※本事例は実在企業をモデルにしたケースであり、数値は参考値です。
事例②:通信業B社…新任管理職の早期つまずきを防止し、離職率を改善
B社では、新任管理職が就任後に抱えるストレスが多く、中には半年で役職を降りたいと申し出るケースも散見されていました。理由を調査すると以下の課題が浮かび上がりました。
管理職としての役割期待が不明確である
部下育成、評価、マネジメントの基礎を学べないまま管理職になる
部署間調整や会議運営が属人的で、スキルの差が大きい
そこでB社は、新任管理職向けの集中ブートキャンプ研修(2日間)に加えて3か月にフォローアップする研修を導入しました。
研修で扱った主な内容
管理職としての役割理解(ミッション・期待役割を明確化)
メンバーとの関係構築方法(1on1設計、傾聴・質問・承認)
面談・評価のポイント
失敗しない会議運営(ファシリテーション)
ストレスマネジメント、感情コントロール
研修後6か月間の追跡調査では、
新任管理職のメンタルダウンによる離職率が25%減少
部署横断のプロジェクト数が1.5倍に増加
会議時間が平均17%短縮
B社が成功した要因は、単なるスキルインプットではなく、役割期待の明文化とフォローアップをセットにした点でした。「期待と責任の構造」が見える化されたことで、新任管理職の不安が解消され、組織全体のコミュニケーションも円滑になりました。
※本事例は実在企業をモデルにしたケースであり、数値は参考値です。
事例③:IT企業C社…心理的安全性を軸に組織文化改革を実現
C社は急速な組織拡大に伴い、中間管理職のマネジメントスタイルがバラバラになり、社内では次のような問題が発生していました。
会議で意見が出てこない
部署間で対立が発生する
若手がアイデアを出すことを躊躇する
ミスが隠されてしまう
離職面談では「心理的安全性の欠如」が数多く指摘され、経営陣は管理職研修の抜本的見直しを決断しました。そのうえでC社は心理的安全性を高めるリーダー行動に特化した管理職研修を導入しました。
研修内容(抜粋)
心理的安全性の4要素(Googleの研究。4領域として整理されることもある)
過去のミスや弱みの自己開示ワーク
ネガティブフィードバックの伝え方
チーム内ディスカッションの設計方法
週次サーベイと行動改善サイクル
心理的安全性は複数の観点で整理されます(例:4つの観点として整理されることもあります)。
導入3か月後、チームに次のような明らかな変化が現れました。
会議での発言者数が2.4倍に増加した
ミス報告件数が増えた一方、重大インシデントはほぼゼロになった
若手の提案が採用される割合が倍に増加した
チームのエンゲージメントスコアが前年比+18ptとなった
特に効果が高かったのは、管理職自身が「弱みや失敗談」を語る自己開示セッションでした。これによりチームに「上司に本音を言っても大丈夫」という空気が生まれ、結果として業務改善や品質向上につながったのです。
※本事例は実在企業をモデルにしたケースであり、数値は参考値です。
これら3つの事例に共通するのは、研修をイベントとして終わらせず、「研修 → 実践 → フィードバック → 行動変容の定着」というプロセスを継続させた点です。管理職研修は、その設計次第で組織の生産性も離職率も大きく変える重要な投資だと言えるでしょう。
まとめ
管理職研修は「企業の未来」を左右する重要施策です。現代の管理職に求められる役割は幅広く、部下育成、リーダーシップ、戦略思考、チームマネジメントなど、多岐にわたります。しかしながら、多忙な管理職が自己流だけでこれらを習得するのは極めて困難です。だからこそ体系的な研修が必要です。
今回紹介した5つの研修は、成果が出やすい実践的プログラムであり、導入しやすい内容となっています。また、研修を成功させるには「講義そのものより、研修後の行動変容をどうデザインするか」が大きなポイントになります。個人課題の明確化、1on1や振り返りの伴走、チーム内の学び共有などを組み合わせることで、研修効果は何倍にも高まります。
FAQ(7問)
Q1:どのようなテーマの研修から受けるべきですか?
A:まずは「1on1育成力強化」がおすすめです。管理職の行動変容が最も早く表れます。
Q2:研修はオンラインでも効果がありますか?
A:効果はあります。ただし講義だけにならないような対話型の演習を取り入れることが重要です。
Q3:研修後の定着施策は何をすれば良いですか?
A:実践課題を出した上での3カ月間から半年程度のフォロー面談、アクションプランの振り返りが効果的です。
Q4:管理職自身が忙し過ぎて研修に集中できないのですが、どうすれば良いですか?
A:短時間型の連続プログラム(2~3時間程度×複数回)がおすすめです。
Q5:部下との関係が悪い管理職にも有効ですか?
A:むしろ効果が大きいです。特にコーチング研修は関係改善の入り口になります。
Q6:研修効果は数値化できますか?
A:離職率、エンゲージメントサーベイ、KPIの検証などで測定が可能です。
Q7:年間で複数の研修を組むべきですか?
A:複数の研修で組むことをおすすめします。単発ではなく、例えば、「部下育成→リーダーシップ強化→戦略立案力強化」のようなシリーズ設計が理想です。
引用・参照元とURL一覧
1.Google re:Work「心理的安全性に関する研究」
https://rework.withgoogle.com/intl/jp/
2.ハーバード・ビジネスレビュー(HBR)リーダーシップ研究
https://dhbr.diamond.jp/list/magazine
3.ポータルサイト政府統計 働き方改革関連調査
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/
4.マネジメントに関する国内外研究論文(行動変容・動機づけ・戦略思考)
サイコム・ブレインズの研修プログラム
管理職(課長層)研修Pentagon Plus - グローバルに通用する研修・アセスメント・映像教材|MBK Wellness株式会社 サイコム・ブレインズ事業本部



