
大手企業に勤める20代の若手社員が身につけておきたい普遍的なビジネススキル 一覧
ビジネス環境の変化が続く中、20代の若手社員が“普遍的に通用するビジネススキル”を早い段階から身につけることが重要です。業務内容や所属部署が変わっても早く成果を出すことができ、結果としてキャリアの選択肢を広げることにつながるからです。企業にとっても、配置転換の柔軟性向上や教育コストの削減、生産性の向上など、多くのメリットがあります。
一方で、「何から学ばせるべきか」は人事の方にとって悩ましいテーマです。
本記事では、国内外のフレームや当社の知見を基に、20代の若手社員育成の土台となる「ビジネススキル 一覧」を体系的に整理してご紹介します。さらに、大手企業だからこそ求められる経営理解やグローバル対応力にも触れ、育成計画のヒントとして活用いただける内容にまとめました。貴社の育成計画の参考になれば幸いです。
目次[非表示]
普遍的なビジネススキルとは何か | 本人・会社にとっての習得メリット
普遍的なビジネススキルとは、業務内容や所属部署が変わっても、成果につながる行動や思考の土台を支えるスキル群を指します。たとえば、コミュニケーション、自己管理、情報を正しく扱う力、論理的に整理して考える力などが代表です。これらは特定の専門知識よりも汎用性が高く、職種転換や異動の機会が多い大手企業の20代の若手社員にとっては特に重要です。
新入社員の頃は目の前の業務をこなすことで精一杯になりがちですが、こうしたビジネススキルを体系的に理解していると、早い段階で、効率的かつ効果的な業務の進め方をつかむことができるようになります。次のステップとなる思考力や協働力の学習にもつながり、長期的にキャリアを支える基盤にもなります。
普遍的ビジネススキルを若いうちに身につける「本人のメリット」
普遍的なビジネススキルを早い段階で若手社員に身につけもらうことは、本人にとって以下のようなメリットがあります。
- キャリアの選択肢が広がる(汎用性)
• 特定の業務に依存しないスキル(例:コミュニケーション、論理的思考、デジタルリテラシーなど)は、どの職種・部門でも求められる。 - 活躍のスピードが速まる(即戦力化)
• 新しい部署へ異動した際も、基本的なビジネススキルを使ってすぐに思考・行動ができるため、立ち上がりが早い。 - 学習コストが下がる(学びの効率)
• 普遍的なビジネススキルがあると、必要な情報を素早く収集・整理できるため、新しい領域でも学習ポイントを短時間でつかみ、専門スキルを効率的に学習できる。 - 不確実な時代でも安定して働ける(リスク耐性)
• 長く通用する普遍的なビジネススキルを持っているほど、会社や事業の変化に左右されにくく、職業人生の安定性は高まる。 - 自己効力感が高まり、主体性が育つ• どんな環境でも成果を出せるような経験が増えることで、自信が生まれ、自律的・積極的に仕事に向き合う姿勢が強まる。
普遍的なビジネススキルの教育を行う「会社側のメリット」
普遍的なビジネススキルを早い段階で若手社員に身につけもらうことは、本人のみならず、会社にとっても以下のようなメリットがあります。
- 異動・配置転換の柔軟性が高まる
• 社内での配置替えがスムーズにでき、人員調整の選択肢が広がる。• 人材ポートフォリオの調整が容易になり、組織の機動力アップにつながる。 - 若手の成長スピードが早まり、生産性が向上する
• 共通言語(論理思考・コミュニケーション基礎)があると、指示系統・チーム内連携の効率が高まる。• OJTや業務指導の吸収が早まり、早期に戦力化しやすくなる。 - マネジメント負荷が軽くなる
• 若手の自己解決能力が上がり、上司の管理・フォロー負担が減る。• マネジャーが細かなやり方指示から解放され、方針・戦略など付加価値の高いマネジメントに時間を割ける。 - 組織全体の再現性・品質が安定する
• 一人の属人的なスキルに頼らない組織運営が可能になる。• 組織の知的生産性が底上げされ、プロジェクトの成功率やアウトプット品質が安定する。 - 離職リスクの低減し、働きがいが高まる
国内外のスキル分類をもとにした普遍的なビジネススキル 一覧
World Economic Forum(WEF)の「The Future of Jobs Report2023」1では、世界的に重視されるスキルとして「分析的思考」「創造性」「レジリエンス」「協働」「テクノロジーリテラシー」などが挙げられています。これらは国や業界を問わず普遍的であり、企業規模の大きさにも左右されません。
大手企業に勤める20代の若手社員にとっては、組織の中で役割が限定されやすい分、こうしたビジネススキルを早期に育てることが後の成長スピードを大きく左右します。
日本企業の文脈でも、「社会人基礎力(経済産業省)」2は同様の観点を示しており、普遍的な基本スキルの重要性は国内外で共通しています。
▶図表1: 普遍的なビジネススキル 一覧
スキル領域 | 内容の概要 | 若手に必要な理由 |
|---|---|---|
分析・思考・課題発見 | 情報を整理し、本質をつかむ力 | すべての業務の基盤となる力 |
コミュニケーション(発信・傾聴・状況把握) | 相手に伝え、正しく受け取り、確認する力 | 信頼構築と業務連携の起点となる力 |
働きかけ・協働・巻き込み・柔軟性 | 他者と協力し、周囲を動かして成果を上げる力 | 大企業で増える部門横断協働に必須 |
自己管理(計画・ストレスコントロール・コンプライアンス) | 目標を設定し、行動を振り返り、状態を整える力 | 安定したパフォーマンス発揮に不可欠 |
テクノロジー理解・データリテラシー | デジタルツールやデータを扱い使いこなす力 | 業務効率化とDX対応に不可欠 |
■実務への落とし込み
普遍的なビジネススキルは20代の若手社員育成の“共通言語”として定義し、研修・OJT・評価の基礎に据えておくと効果的です。
大手企業で働く20代の若手社員が、さらに伸ばしたい発展的なビジネススキル 一覧
20代の若手社員が基盤となるビジネススキルを身につけたうえで、大手企業でより大きな役割を担っていくためには、次のような発展的なビジネススキル 一覧を意識して育てていくことが重要です。
特に経営理解やグローバル対応力は、将来的にマネジャー業務やプロジェクト推進に関わる際の土台となります。
経営の基本を押さえる(会計・戦略・マーケティング)
大手企業で働く20代のうちから、経営のエッセンスを理解しておくことは、単に専門職への準備という枠を超え、日常業務の“判断の質”を高める効果があります。
- 会計の基本(PL・BS・CF)
企業活動の裏側で何が起きているかを理解する力です。例えば、PLの「粗利」「営業利益」の意味がわかると、自分の業務が会社の収益にどうつながっているかを捉えられ、日々の判断や行動に経営視点を取り入れられるようになります。 - 戦略の基本(3C・SWOT・競争優位)
自社の置かれている環境を俯瞰し、なぜこの施策を行うのかを理解する助けになります。提案や改善活動の質も上がるため、若手のうちから押さえておきたい領域です。 - マーケティング(4P・顧客価値)
大手企業ほど、部門が分かれているからこそ、必要な視点です。自分の仕事が顧客価値にどうつながっているのかが腹落ちすると、業務の主体性が高まります。
グローバルで通用する力(英語・異文化理解・越境協働)
多くの大手企業では、20代のうちから海外案件に関わる機会が増えています。必ず海外赴任をするということではなく、社内のプロジェクトや顧客対応でもグローバル基準のコミュニケーションが求められる場面は着実に増えています。
- 英語力(基礎+実務)
メール読解、オンライン会議での基本発言、シンプルな資料作成など、実務で使えるレベルの英語力を指し、早めに身につけておくほどグローバル案件への参加がしやすくなります。 - 異文化理解
海外事業との連携や海外チームとのオンライン協働において、文化的背景や価値観の違いを理解・尊重しながらコミュニケーションできる力であり、トラブル回避と信頼関係構築に直結します。 - 越境協働力
異なる専門領域や地域のメンバーと協力し、オンライン・オフラインを問わず成果を生み出す力であり、大手企業ならではのグローバルプロジェクトで成長機会を広げるうえで重要です。
■実務への落とし込み
発展スキルは短期で伸びないため、20代のうちから触れることで30代での活躍の幅が大きく広がります。
企業ができる4つの支援策──20代の若手社員が「学び続けられる環境」を整える
20代の若手社員のビジネススキル育成においては、本人の意欲に依存せず、企業側が学習できる環境を整えることが重要です。特に大手企業は部署によって業務量や学習機会に差が生まれやすく、“誰でも、どの部署でも”一定の質で学べる環境を整えること、全社的な仕組みとして設計することが必要です。ここでは、企業が実践しやすい四つの育成支援策として整理します。
動画ライブラリで、本人が学びたい、必要なビジネススキルを効果的にインプットする
- 1コンテンツ(動画1クリップ)あたり10分程度で学べる
- すきま時間で学習しやすい
- 異動直後などでも必要な知識をすぐ補える
- 全社で“学びの型”をそろえられる
当社のビジネスマスターズ「動画ライブラリ」は、研修でも使われている良質な教材で、社会人が身につけるべきビジネススキルが体系的に網羅されている点が特徴です。
結果として、
→ 部署による学習格差が減る
→ 個々の成長スピードが均質化する
→ 組織全体のスキルレベルが底上げされる
というように、大手企業にとって大きなメリットにつながります。
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eラーニングの進化系「コースウエア」で、理解の深さと実践につなげる
学習領域や対象者、教育のタイミングや予算によっては、集合研修ではなく個人学習のスタイルで理解を深めさせるのが適当、と判断する企業もあるでしょう。そのような場合は、個人ワークや理解度確認テスト付きのeラーニングの進化系「コースウエア」が効果を発揮します。
動画ライブラリが“学びを広げる”フェーズに適しているのに対し、コースウエアは“学びを深め、実務に活かせる状態へ高める”学習ツールです。
当社のビジネスマスターズ「コースウエア」は、
• 動画視聴
• 教材テキスト
• 個人ワーク
• 理解度テスト
などを通じて、知識をインプットし、実際の業務シーンを想定した個人ワークに取り組むことによって、自学自習でありながらも、実務で使える力を身につけることができるように学習設計されています。
動画で知識のインプット→ワークシートを使った演習で知識を使える力に→理解度テストで知識定着
このように、自分の考えとして知識・スキルを整理し、習得し、学習内容の理解度をテストやチェックリストで確認する、という構成により、インプットした知識が現場で使えるスキルに落とし込むことができます。
つまりコースウエアは、独学でありながら、動画学習で得た知識を“実務レベルに落とし込む”ことができる学習手段です。
<ビジネスマスターズの「コースウエア」の資料をダウンロードしてみる>
フォローアップ研修で、実務への変換を加速させる
集合研修の良さは、他の受講者と学び合い、高め合いながら、インプットしてきた知識を確認しあったり、相談や意見交換ができることです。ゆえに対話や実践を伴う集合研修の場は必要不可欠です。
集合研修はカスタマイズで実施することのメリットは多くありますが、20代の若手社員であれば、費用対効果の高い、完全オンライン&短時間で実施できるようなフォローアップ研修をお勧めします。
当社のビジネスマスターズ「まなラン」は、
- 動画視聴
- チャット投稿
- 1時間程度のミニワークショップでのロールプレイやグループディスカッション
- 現場実践
の構成で、動画視聴で学んだ内容を各自で咀嚼しながら、ミニワークショップと現場実践で“実務レベル”へ落とし込んでいきます。実践力強化に特化したパッケージ型研修としてすぐ導入できる点に、高い評価をいただいています。
<ビジネスマスターズの「まなラン」の資料をダウンロードしてみる>
<関連記事>
OJTと1on1で、現場でのスキル定着を後押しする
学んだ知識を業務の中で使えるようになるには、現場での伴走が欠かせません。
- 上司や先輩との定期的な1on1
- OJTでの観察・フィードバック
- 小さな行動変化の確認
- 本番業務での成功体験づくり
これらは、動画・eラーニング・研修で学んだ内容を“職場での行動”へ移すための重要ステップです。
特に20代の若手社員のうちは、「理解した」→「できた」→「任せられる」の階段を上るために、現場の支援が不可欠です。
▶図表2: サイコム・ブレインズのビジネスマスターズと各種サービスの活用例
学習ステップ | 目的 | 主な手法 |
|---|---|---|
インプット | 知識を短時間で習得 | 動画ライブラリ |
深い理解 | 実務で使える形に整理 | コースウエア |
アウトプットの練習 | 実践に必要な精度に昇華 | フォローアップ研修/まなラン |
現場実践 | 日常業務でスキルを定着 | 上司・先輩のフィードバック (OJT/1on1) |
■実務への落とし込み
動画視聴・eラーニング(コースウエア)・集合研修・OJT/1on1を組み合わせた“多層的な育成設計”を行うことで、20代の若手社員の成長とビジネススキルの定着が安定します。
まとめ
大手企業に勤める20代の若手社員には、業務内容や所属部署が変わっても通用する「普遍的なビジネススキル」を早い段階で身につけてもらうことが重要です。コミュニケーション、自己管理、論理思考といった基盤に加え、会計・戦略・マーケティング、英語力や越境協働力などの発展スキルに触れておくことで、30代以降の活躍の幅が大きく広がります。
企業としては、20代の若手社員が独学で学べる動画ライブラリやeラーニング、縦横のつながりをつくったり、一つ上のレベルの業務を経験できるようなフォローアップ研修やOJT/1on1を組み合わせ、誰もが学び続けられる土台をつくることがポイントです。
本記事が、貴社の20代若手社員の育成計画を見直す際の整理の一助となり、貴社の育成計画や学習設計のパートナーとして、お声がけいただければ幸いです。
FAQ
Q1.普遍的なビジネススキルと、いわゆる「社会人基礎力」は何が違いますか?
A. 社会人基礎力は経済産業省が定義した枠組みで、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」という3つの能力で整理されています。一方、本記事で扱う普遍的なビジネススキル一覧は、それらを踏まえつつ、実務で使われる言葉(コミュニケーション、論理的思考力、デジタルリテラシーなど)に翻訳して整理したイメージです。社内の育成体系に落とし込む際の参考にしていただければと思います。
Q2. 20代向けのビジネススキル 一覧を作るとき、まず何から始めればよいですか?
A. 最初から完璧な一覧を作ろうとするより、①共通で身につけさせたい基盤スキル(コミュニケーション・自己管理・論理的思考など)と、②会社として強化したい発展スキル(会計・戦略・英語など)を「10〜15項目」程度に絞って整理するのがおすすめです。そのうえで、既存研修やeラーニングがどのスキルと対応しているかをマッピングすると、過不足や重複が見えやすくなります。
Q3. ビジネススキル 一覧を作っても、現場がなかなか育成に協力してくれません。どうすればよいでしょうか?
A. 現場が“自分事”として受け止めにくいのは、「スキル一覧=人事の資料」に見えてしまうときです。スキルごとに「このスキルがあると、現場マネジャーの負担がどのように減るか」「チームの成果にどうつながるか」が分かると腹落ちしやすくなります。また、評価・1on1の面談シートとスキル一覧を連動させ、上司が自然に話題にしやすい仕掛けをつくるのも有効です。
Q4. 動画学習・eラーニング・集合研修・OJTのうち、どこに一番予算をかけるべきでしょうか?
A. どれか1つに集中投資するより、目的に応じて役割分担させる考え方が有効です。インプット量を増やしたいなら動画ライブラリ、より理解を深めてもらいたいならeラーニング、行動変容を狙うなら集合研修とOJT/1on1、といったイメージです。予算制約がある場合は、まず動画+eラーニングで共通の土台を作り、その上に若手選抜向けの集合研修を乗せるなど、階層的な設計を検討するとよいでしょう。
Q5. 20代のうちに、MBAレベルの内容まで教える必要はありますか?
A. フルスペックのMBAカリキュラムを再現する必要はありませんが、会計・戦略・マーケティングの「ごく基本」に触れておくことは、将来のマネジャー候補を育てるうえで有効です。PLやBSの読み方、3CやSWOTの考え方、顧客価値の捉え方など、日常業務と結びつけやすい範囲から始めることで、若手社員の判断の質が変わり、経営視点を持ったビジネススキルとして活きてきます。
参照
*1 World Economic Forum, “The Future of Jobs Report 2023”
https://www.weforum.org/publications/the-future-of-jobs-report-2023/
*2 経済産業省「社会人基礎力(METI/経済産業省)」, 2006–
https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/
■本記事の監修者■



