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AI時代の組織と人事のあり方 ――人事は何を再定義すべきなのか

2025年12月18日、MBK Wellness株式会社は、『AI時代の組織と人事の在り方、「いま」と「これから」』と題したオンラインセミナーを開催しました。

生成AIの進化は、単なる業務効率化にとどまらず、組織や仕事の前提条件そのものを大きく変えつつあります。とりわけ、目的に応じて自律的に行動するAIエージェントの実装が現実味を帯びる中で問われているのは、「AIをどう使うか」ではなく、「AIと共にある時代に、人事は何を設計し直すべきか」という点です。

本セミナーでは、AI inside 株式会社 Human Resource Development Division Director の渡辺 剛史氏による講演と、サイコム・ブレインズ デジタルラーニング事業部長・花木との対話を通じて、AI時代における組織と人事の変化、現場で顕在化しつつある課題、そして人事に求められる役割の再定義について議論が行われました。進行はサイコム・ブレインズの小西が務め、講演と対話をつなぐ形で議論が展開されました。

AIを前提とした時代において、人事は管理・運用の担い手にとどまらず、組織の在り方そのものを再設計する存在へと変わることが求められています。

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目次[非表示]

  1. 1.AIは「ツール」から「同僚」へ――講演で示された前提条件の変化
  2. 2.AI導入で顕在化する、現場と人事のリアルな課題
  3. 3.人事は「管理部門」から「組織の研究開発部門」へ
  4. 4.まとめ:AI時代に、人事は何を問い直すべきか

AIは「ツール」から「同僚」へ――講演で示された前提条件の変化

セミナー冒頭の講演で、渡邊氏は「AIはもはや単なるツールではない」と指摘しました。従来の生成AIは、人間の指示に応じて回答や文章を生成するアシスタント的な存在として捉えられてきましたが、現在は、目的やゴールに応じて自律的に判断・行動する「AIエージェント」の実装が進みつつあります。

こうしたAIエージェントは、業務を補助する存在ではなく、人間と協働しながら業務の一部を担う「新たな同僚」として位置づけられる存在です。海外のHRテックカンファレンスにおいても、AI活用の潮流は実験段階から実装フェーズへと移行しており、AIと人間が共に働くことを前提とした組織設計が主要なテーマとして議論されています。

この変化は、働き方だけでなく、人間に求められる役割そのものを問い直すものです。業務の実行や定型的な判断はAIが担い、人間は目的設定や意思決定、判断といった上流領域にシフトしていく。渡邊氏は、こうした前提条件の変化を踏まえたうえで、組織や人事の在り方を再設計する必要性を強調しました。

AI導入で顕在化する、現場と人事のリアルな課題

後半の対話パートでは、AI導入が進む現場で実際に起きている課題が、具体的な事例をもとに共有されました。サイコム・ブレインズの花木から投げかけられたのは、「AIを導入した結果、かえってマネージャーの仕事が増えている」という現場感覚に基づく問いです。

AIの活用によって、メンバーからのアウトプット量やスピードは大きく向上します。一方で、それらをチェックし、最終的な判断を行うマネージャーの負荷が急増し、意思決定業務がボトルネックになるケースも少なくありません。効率化を目的に導入したAIが、別の工程で新たな負荷を生み出してしまう状況は、多くの組織で起こり得る課題だと言えます。

この問いに対し、渡邊氏は「マネージャー自身もAIで武装する必要がある」と述べました。メンバーがAIを活用して生産性を高めるのであれば、マネージャーもAIを活用し、判断やスクリーニングの一部を委ねることで、意思決定の質とスピードを高めていく必要があります。すべてを人がチェックする前提を見直し、AIに委ねる領域と人が担うべき領域を再設計することが重要だと指摘されました。

また、花木からは、若手人材の「スキルの空洞化」への懸念も提示されました。AIによって一定水準のアウトプットが容易に得られるようになる中で、従来、下積みとして身につけてきたスキルは今後も本当に必要なのか。この問いに対し、渡邊氏は「そもそも、そのスキルが将来にわたって必要なのかを問い直すべきだ」と応じました。

AIネイティブ世代の若手は、AIを駆使して高い成果を生み出すことができます。その価値をどのように捉え、どのような能力を育てていくのか。従来の育成モデルを前提としたままでは、AI時代における人材の成長を適切に捉えることは難しいという問題提起がなされました。

人事は「管理部門」から「組織の研究開発部門」へ

こうした議論を通じて浮かび上がったのが、人事の役割そのものを再定義する必要性です。渡邊氏は、AI時代において人事に求められるのは、制度を管理・運用する機能にとどまらず、AIを前提とした組織や仕事の在り方を実験し、再設計する「組織の研究開発部門」としての役割であると述べました。

AIをどこまで業務に組み込み、何を人間に残すのか。評価や処遇はどのように設計し直すべきか。AIを含めた人材ポートフォリオをどのように描くのか。これらはすべて、人事が主体となって考えるべきテーマです。

さらに、AI活用が進むほど重要になるのが、人間中心設計や倫理・ガバナンスの視点です。最終的な判断をどこまでAIに委ね、どこから人が担うのかを明確にしなければ、組織は不透明さや不安を抱えたまま変化に翻弄されてしまいます。AIと人が協働する前提だからこそ、人事が「設計者」として果たす役割は、これまで以上に大きくなっています。

まとめ:AI時代に、人事は何を問い直すべきか

AIによって仕事が奪われるかどうかが問題なのではありません。AIを前提に、仕事や組織の在り方を再設計できるかどうかが、これからの分水嶺となります。本セミナーで示されたのは、AI時代における人事の役割は、正解を与えることではなく、変化を前提に問い続けることだというメッセージでした。

人事は今、自らの役割を再定義する局面に立っています。AIと共にある時代に、何を人に残し、何を委ねるのか。その問いに向き合い続けることこそが、これからの人事に求められる最も重要な役割だと言えるでしょう。

本セミナーは、AIと共にある時代における人事の役割を改めて問い直す機会となりました。

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ビジネスマスターズ・マーケティングチーム
ビジネスマスターズ・マーケティングチーム
教授システム学修士であり、eラーニングシニアコンサルタントであるデジタルラーニング事業部門長 花木喜英率いるビジネスマスターズ・マーケティングチーム。企業研修登壇実績10年以上・年間100本以上をこなすサイコム・ブレインズ/プログラムディレクター 小西功二とメンバー3名で、企業とビジネスパーソン双方が利を得る教材開発をコンセプトに、学術理論を徹底研究し開発されたビジネスマスターズを、世に広めるべく尽力しています。

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