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階層別研修は本当に必要か?毎年同じ内容になる組織の共通構造

階層別研修は本当に必要なのでしょうか。

多くの組織ではまず「内容が古い」「形骸化している」といった中身についての議論が先行します。しかし、その研修が 何のためにあるのか、あるいは どんな判断や行動を揃えるためのものなのか を、制度や運用の仕組みとして説明できる組織は少ないのが実情です。

「それ、去年もやった研修では?」──階層別研修をめぐる議論の中で、このような指摘が一度は出た経験を持つ企業は少なくないはずです。新人研修、若手研修、管理職研修。名称や対象は分かれているものの、内容や進め方は数年変わっていない。やめるほどの問題ではないが、続ける根拠も見えにくい。そのような状態に、経営や人事が漠然とした違和感を抱くことは決して珍しくありません。

本記事では、この「毎年同じ階層別研修」という現象を、研修内容の良し悪しや受講者の感想といった主観的な評価から切り離し、設計と運用の構造という観点から整理します。なぜ階層別研修は更新されなくなるのか。更新される研修と、そうでない研修の違いはどこにあるのか。その構造を明らかにすることで、人事企画・育成担当者や経営企画、CHRO層が、自社の研修を「続ける」「変える」「やめる」判断を行うための軸を提示します。

目次[非表示]

  1. 1.階層別研修が「更新されない」状態とは何か - 階層別研修の必要性が見えなくなるとき
    1. 1.1.研修内容が固定化するとはどういう状態か
    2. 1.2.「誰も悪くない」のに起きる更新停止
    3. 1.3.「毎年やっている研修」として扱われる瞬間
  2. 2.なぜ階層別研修は「毎年同じ内容」で固定化するのか
    1. 2.1.年度運用と研修設計の相性の悪さ
    2. 2.2.制度と切り離された研修という位置づけ
    3. 2.3.「更新のきっかけ」が設計されていない
  3. 3.階層別研修が更新される組織/されない組織の決定的な違い
    1. 3.1.研修の位置づけが「教育施策」で止まっているかどうか
    2. 3.2.変化が研修に反映される経路を持っているか
    3. 3.3.研修を「管理対象」として扱っているか
  4. 4.階層別研修に「更新責任」を持たせる設計
    1. 4.1.更新責任とは何を指すのか
    2. 4.2.担当者ではなく、仕組みに更新責任を組み込む
    3. 4.3.階層別でやる意味がここで初めて明確になる
  5. 5.毎年同じ研修でも機能するケース/しないケース
    1. 5.1.毎年同じ研修でも機能するケース
    2. 5.2.毎年同じ研修が機能しなくなるケース
  6. 6.階層別研修を変える・やめる前に確認すべき論点
    1. 6.1.その研修は、どの判断を揃えるためのものか
    2. 6.2.階層別で実施する必然性はどこにあるか
    3. 6.3.前提を更新すれば機能するのか、それとも役割を終えているのか
  7. 7.階層別研修をあらためて見直す前に
  8. 8.まとめ

階層別研修が「更新されない」状態とは何か - 階層別研修の必要性が見えなくなるとき

まず整理しておきたいのは、本記事で扱う「更新されない階層別研修」とは、単に内容が古い研修や評判の悪い研修を指しているわけではないという点です。ここで問題にしているのは、研修が組織の変化や制度運用と切り離されたまま、見直される前提を持たずに継続されている状態そのものです。この状態を正しく捉えない限り、「続けるべきか、やめるべきか」という議論は感想論や印象論に流れてしまいます。

ここで、多くの企業に共通する一つの場面を挙げてみます。評価制度が改定され、管理職に求める役割や判断基準が変わったにもかかわらず、管理職向け研修の内容は前年踏襲のまま据え置かれている。評価面談では新しい視点が求められているのに、研修ではその前提が共有されていない。このような制度と研修のズレは、特別な企業の話ではなく、日常的に起こり得る現象です。

問題は研修の中身そのものではなく、組織の変化と研修がどのように接続されているかにあります。この点を押さえないままでは、研修の是非を正しく判断することはできません。

要するに、更新されない研修とは「変化を前提に設計されていない研修」です。

研修内容が固定化するとはどういう状態か

多くの企業で行われている階層別研修は、数年単位で内容・構成・進め方がほとんど変わらないまま運用されているケースが少なくありません。新人向け、若手向け、管理職向けといった区分は設けられているものの、扱うテーマや資料、ワークの構成は前年踏襲となり、受講者だけが毎年入れ替わっていきます。

この状態は、単に「研修内容が古い」という問題ではありません。事業環境や組織構造、評価制度が変わっても、研修だけがその変化と連動せずに存在し続けている点に本質的な課題があります。研修が組織の変化と切り離され、単なる年次イベントとして固定化している状態です。

「誰も悪くない」のに起きる更新停止

階層別研修が更新されない背景には、特定の誰かの怠慢や判断ミスがあるわけではありません。人事担当者は限られたリソースの中で年度計画を回し、現場は目の前の業務に追われ、経営は個別研修の中身まで細かく関与しない。その結果、「特に問題が起きていないから前年通りで進める」という判断が積み重なっていきます。

重要なのは、更新されない状態が自然発生的に生まれているという点です。変えないことが最も安全で、説明コストも低い選択である限り、研修は意図せず固定化していきます。これは個人の姿勢や意識の問題ではなく、組織の運用構造が生み出す現象です。

「毎年やっている研修」として扱われる瞬間

更新が止まった階層別研修は、やがて「毎年やっている研修」「例年通りの研修」として認識されるようになります。この段階では、研修の目的や役割をあらためて問い直す機会が失われ、実施すること自体が前提条件として扱われるようになります。

この状態に入ると、研修を続けるべきか、変えるべきかという議論自体が難しくなります。判断の軸となる目的や期待効果が共有されていないため、「やめる理由がないから続ける」という消極的な選択が繰り返され、研修は更新されないまま維持されていきます。

なぜ階層別研修は「毎年同じ内容」で固定化するのか

では、なぜ階層別研修は意図的に放置しているわけでもないのに、結果として固定化してしまうのでしょうか。この章では、個人の意識や姿勢ではなく、研修を取り巻く運用上の構造に着目し、その背景を整理します。

本質的には、問題は研修内容ではなく、更新を判断する仕組みがないことにあります。

年度運用と研修設計の相性の悪さ

階層別研修が固定化しやすい理由の一つに、年度運用との相性があります。多くの企業では、研修計画は年度単位で策定され、予算も前年実績をベースに確保されます。この仕組みの中では、大きな見直しよりも前例を踏襲する方が合理的な判断になりやすいのです。

特に階層別研修は対象人数が多く、実施負荷も高いため、抜本的な変更はリスクと捉えられがちです。その結果、内容の是非よりも「今年も滞りなく実施できるか」が優先され、研修設計そのものを問い直す機会が失われていきます。

制度と切り離された研修という位置づけ

もう一つの要因は、研修が等級制度や評価制度と十分に接続されていないことです。階層別研修が「育成体系の一部」ではなく、「教育施策の一つ」として扱われている場合、制度変更があっても研修内容が見直される必然性が生まれにくくなります。

管理職に求める役割や判断基準が変わっていても、それが研修にどう反映されるかが定義されていなければ、研修は従来の前提のまま続いてしまいます。

「更新のきっかけ」が設計されていない

多くの階層別研修には、「どのような変化が起きたら見直すのか」という更新のトリガーが設計されていません。事業戦略の転換、組織再編、評価基準の変更といった要素があっても、それが研修見直しにつながる仕組みがなければ、研修は自動的に更新されません。

制度変更と研修が接続されていない構造そのものが、結果として研修の固定化を生み出しています。

階層別研修が更新される組織/されない組織の決定的な違い

同じように階層別研修を実施していても、組織によって研修が更新され続けるケースと、そうでないケースに分かれます。この違いは、研修内容の工夫や担当者の力量よりも、研修をどのような位置づけで捉えているかに大きく左右されます。

分かれ目は、研修を「施策」と見るか、「制度運用の一部」と見るかです。

研修の位置づけが「教育施策」で止まっているかどうか

更新されない組織では、研修は教育施策の一つとして扱われ、制度運用やマネジメントの中核には組み込まれていません。一方で更新される組織では、研修は人材マネジメントを成立させるための構成要素として位置づけられています。

変化が研修に反映される経路を持っているか

更新される組織には、等級定義や評価項目の変更が研修テーマの見直しにつながる経路があります。更新されない組織では、この経路が存在しません。

研修を「管理対象」として扱っているか

更新される組織では、研修は実施実績だけでなく、中身の妥当性や前提条件も含めて管理対象とされています。一方、更新されない組織では、研修の実施そのものが目的化し、前提の整合は管理されていません。

更新されない組織:実施が目的化している

更新される組織:前提の整合が管理されている

階層別研修に「更新責任」を持たせる設計

ここまで見てきたように、階層別研修が更新されるかどうかは、個別の工夫よりも設計次第で決まります。この章では、研修を更新可能なものとして運用するために必要な「更新責任」という考え方を、実務に落とし込んで整理します。

更新責任とは何を指すのか

更新責任とは、研修資料を作り替えることではありません。どのような変化が起きたときに、どの研修を見直すかを判断する責任です。

実務上は、次のような視点が最低限押さえられている必要があります。

  • 制度変更時に、影響を受ける研修が洗い出されているか

  • 評価項目や期待役割と、研修テーマが対応づいているか

  • 「見直さない」という判断にも、明確な理由があるか

これらが整理されていない状態では、更新責任は実質的に存在していないのと同じです。

担当者ではなく、仕組みに更新責任を組み込む

更新責任を特定の担当者に依存させると、異動や退職によって容易に失われます。そのため、責任は人ではなく仕組みに埋め込む必要があります。等級定義や評価基準の見直しプロセスに、関連研修の確認を組み込むといった設計が有効です。

階層別でやる意味がここで初めて明確になる

更新責任が設計されて初めて、「なぜこの研修は階層別なのか」という問いに答えられるようになります。階層ごとに求める判断や役割が明確であれば、研修も更新され続けます。

毎年同じ研修でも機能するケース/しないケース

ここまでの議論を踏まえると、「同じ研修を毎年続けていること」自体を一律に否定することはできません。

重要なのは、同じであることではなく、同じである理由が説明できることです。

毎年同じ研修でも機能するケース

法令遵守やリスク対応のように、前提条件が大きく変わりにくい領域では、研修内容が毎年同じであっても機能します。この場合、研修の目的や揃えるべき判断が明確であり、「なぜ同じ内容を続けているのか」を説明できます。

  • 前提が安定している

  • 揃える判断や行動が明確である

毎年同じ研修が機能しなくなるケース

一方で、事業環境や制度、求められる役割が変化しているにもかかわらず、研修だけが更新されない場合、その研修は徐々に影響力を失っていきます。

  • 前提条件が変化している

  • 揃える判断が更新されていない

この違いは、研修内容の良し悪しではなく、前提条件が管理されているかどうかにあります。

階層別研修を変える・やめる前に確認すべき論点

最後に、階層別研修を見直す際に、拙速な判断に陥らないための論点を整理します。

その研修は、どの判断を揃えるためのものか

階層別研修が存在する理由は、知識を与えること自体ではなく、組織として揃えたい判断や行動を明確にすることにあります。その前提が言語化されているかを確認する必要があります。

階層別で実施する必然性はどこにあるか

個別研修やテーマ別研修では代替できない理由があるのか。階層という切り口で揃えるべき判断が本当に存在しているのかを問い直します。

前提を更新すれば機能するのか、それとも役割を終えているのか

前提条件を更新すれば引き続き機能する研修なのか。それとも、その研修自体が役割を終えているのか。ここを切り分けて考えることが重要です。

やめるかどうかを決める前に、「更新できる設計か」を問うことが欠かせません。

階層別研修をあらためて見直す前に

ここまで見てきたように、階層別研修が「毎年同じ内容」になる背景には、研修内容の問題というよりも、更新される前提で設計・運用されていない構造があります。

重要なのは、研修を変えるかどうかを急いで決めることではありません。いま実施している研修が、何を揃えるために存在しているのか、そしてその前提は、いまの事業や制度と整合しているのか

その問いを構造として整理できて初めて、続ける研修、変える研修、役割を終えた研修が見えてきます。

まとめ

本記事では、「毎年同じ内容で実施されている階層別研修」という現象を、設計と運用の構造から整理しました。

階層別研修の必要性は、「実施しているかどうか」や「内容が新しいかどうか」で決まるものではありません。重要なのは、その研修が何を揃えるために存在しているのか、そしてその前提が現在の事業や制度と整合しているかを説明できるかどうかです。

更新される前提が設計されていない階層別研修は、時間とともに必要性が見えなくなっていきます。一方で、更新責任が仕組みとして組み込まれている研修は、同じ形式であっても、組織にとって意味を持ち続けます。

階層別研修が必要かどうかを判断するためには、まずその研修が担っている役割と前提条件を構造として捉え直すことが欠かせません。

ビジネスマスターズ・マーケティングチーム
ビジネスマスターズ・マーケティングチーム
教授システム学修士であり、eラーニングシニアコンサルタントであるデジタルラーニング事業部門長 花木喜英率いるビジネスマスターズ・マーケティングチーム。企業研修登壇実績10年以上・年間100本以上をこなすサイコム・ブレインズ/プログラムディレクター 小西功二とメンバー3名で、企業とビジネスパーソン双方が利を得る教材開発をコンセプトに、学術理論を徹底研究し開発されたビジネスマスターズを、世に広めるべく尽力しています。

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